不動産デベにとって転売は悪なのか
もともと、不動産デベロッパーにとって、転売ヤーの存在そのものが悪とは言い切れない。昨今、都心部のタワマンは1期1次、1期2次、1期3次、2期1次…と1回あたりの販売戸数を細かく区切ることで供給戸数を絞り、倍率を高める手法が一般的になっている。
人気が殺到して抽選になるような物件はそれだけでも売りやすくなるため、意図的に供給不足を演出している側面があった。転売ヤーの跋扈は、自ら招いた事態でもある。
行政の圧力や世論を前に尻に火がついた状況で導入された今回の転売前規制だが、果たして実際に効果はあるのだろうか。
これまでタワマン投資で巨額の富を得ている不動産投資家のA氏に電話取材したところ、「あまり効果がないのでは」と疑問を呈する。
今回、導入された規制は引き渡し前の販売を禁じているが、裏を返せば、引き渡し後の転売は問題ないということ。「実際に引き渡されるまで待って、その上で売却すればいい」と話す。
そもそも、A氏のような投資家の場合、引き渡し前に急いで売る必要はない。賃貸物件として運用するなど、様々な選択肢がある。あくまで、今回の規制は出口の1つを潰したということにすぎない。
実際、24年に販売が始まった「リビオタワー品川」(港区)では、ある投資家が高層階を中心に大量の部屋を転売し、週刊誌のインタビューに応じた上で「資本主義をハック」したと自慢したことが話題になった。
資本力がある投資家にとってはほぼ無風
後にこの投資家が関わった物件は批判を受けて不動産ポータルサイトから取り下げられたものの、仮に保有を続けていれば足元の価格高騰で更に利益が膨らんでいる可能性が高い。資本力がある投資家にとっては、ほぼ無風といえるだろう。
しかし、今回の規制にまったく意味がないとも言い切れないとA氏は話す。「キャッシュで購入できない、サラリーマン投資家は今回の対策で大打撃なのでは」と分析する。
昨今のタワマンバブルに乗じ、転売目当てで抽選に申し込むサラリーマン投資家が激増していたが、この層には致命傷となる可能性が高いという。
これまで、多くのサラリーマン投資家は新築タワマンを申し込みする際、自宅を売却することを条件に金融機関でローン審査を依頼し、手付金だけ払って部屋を確保。
引き渡し前に転売することで1戸あたり数千万円にもなる利益を上げていた。しかし、引き渡し前の売却が禁止されたことで、こうした手法は使えなくなった。













