引き渡し前に転売したら2000万円が返ってこない

11月3日、三井不動産レジデンシャルが「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)の購入希望者に対して「お引渡し前の売却活動について」とするメールを送信したことが大きな話題となっている。

物件引き渡し前の転売を禁止し、売買契約や媒介契約、広告などのいっさいの売却活動を禁止するという内容で、守れなかった場合、手付金を違約金として没収し、売買契約を解除するという厳しい内容だ。経済メディアのみならず、一般紙やテレビ局も取り上げる事態となった。

セントラルガーデン月島は70㎡前後の高層階の部屋で2億円程度。仮に手付金が没収されるとなれば、2000万円近い大金が返ってこない計算となる。

「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)の外観イメージ
「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)の外観イメージ
すべての画像を見る

4日に配信された朝日新聞デジタルの記事によると、三井不レジは「都心部を中心に投機的、短期転売目的と思われるマンション購入が一定数見受けられる」として、「居住目的の一般消費者が物件(ご希望の住戸)を購入できなくなることを防ぐため」と説明しているというが、不動産デベが購入者に対してこれだけ強気の態度をとるのは異例の出来事だ。

不動産デベ最大手として業界に君臨する三井不動産だが、これまで転売ヤー対策では後手に回ってきた。

東京五輪選手村跡地に開発された、実質的な国家プロジェクトである「晴海フラッグ」(中央区)の開発・分譲では居並ぶ大手デベ連合の筆頭に名を連ねたものの、相場よりも大幅に安い価格だったのにもかかわらず規制が緩かったことから抽選には転売ヤーが殺到。

ルールを守った実需の日本人はほとんどが抽選にはずれ、複数の法人を使って大量に札を入れた中国人や投資家に当選が集中した。国民の財産である割安な住戸がこうした人々にわたり、板状マンションは5戸に1戸を法人が所有するという惨状を招いた。

 新築引き渡し前に中古物件として売り出されるカオス

その後も、三井不レジ側は新築タワマンを販売するたびにモデルルームでの見学を購入の条件にしたり、購入戸数を制限したりと投資家対策に取り組んだ。しかし、上に政策あれば下に対策あり。

結局、親族や知人を総動員するなどして制限を回避する中国人や投資家に購入を許しており、最近販売された「パークシティ中野  ザ  タワー ブリーズ」(中野区)や「ザ  豊海タワー マリン&スカイ」(中央区)でも、引き渡し前にもかかわらず、販売価格よりも大幅に高い価格で不動産ポータルサイトに「中古物件」として掲載される事態を許している。

マンション価格の上昇は行政も厳しい視線を注ぐ。千代田区は7月、「投機目的でのマンション取引等に関する要請について」として不動産業界に対し再開発物件の短期転売を防ぐように要請した。これまでも何度も有効な対策を打てないでいる不動産デベロッパー側に公然と圧力をかけた形だ。