マクドナルドがセブンカフェからシェア奪回した100円コーヒーの攻防…消費者のある行動に着目した“味”の工夫とは
日本では当たり前になったコンビニやファストフードの「100円で飲める美味しいコーヒー」。しかしこの常識、海外のコーヒー関係者から見ればありえないクオリティだという。ブームの先駆者はマクドナルドだったが、そこにセブン-イレブンが参入し、市場は一気に塗り替えられた。100円コーヒー誕生の影で起きていた攻防を、マクドナルドのコンサルとして携わった著者が語る。
『教養としてのコーヒー』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全4回のうち2回目〉
教養としてのコーヒー #2
なぜ100円でプレミアムコーヒーが提供できるのか?
ところで、高品質のプレミアムコーヒーをたった100円ほどで提供できるのはなぜでしょうか。高品質のコーヒー豆を使えば原価率が上昇し、利益が出ないのが普通です。
しかし、コンビニにとって美味しいコーヒーは(言い方は悪いかもしれませんが)撒き餌のようなもの。身近なコンビニで手軽に美味しいコーヒーが飲めるなら、お客さんはやってきます。
そして、コーヒーと一緒にサンドイッチを買う。お弁当を買う。デザートを買う。ついでにいろいろ買うでしょう。コーヒー目当てで足を運んでもらえればいいのです。つまり、コーヒーにかかる費用は「販売促進費」と考えることができます。
マクドナルドのコーヒーはセットで提供されることが多い
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撒き餌に徹するなら、下手にコストカットに手を出して味を落としてはいけません。本当に美味しいコーヒーである必要があります。そうでなければお客さんは寄ってきてくれません。ですからコンビニ各社は努力して美味しさを追求しています。パッケージデザインやマシンなど見せ方も含めてブランドを作り、「〇〇のコーヒーは美味しい」というイメージを作り上げています。
ファストフード店もそうです。コーヒー単体で利益が出なくとも、セットでハンバーガーを買ってもらえたらいいのです。「美味しいコーヒーが飲めるから行こう」と思ってもらえるよう、品質を高める努力をしています。
#3に続く
文/井崎英典 写真/Shutterstock
2025/9/7
1,045円(税込)
288ページ
ISBN: 978-4815636043
この一冊を読めば、
あなたの一杯はもっと美味しくなる。
アジア人で初めてワールド・バリスタ・チャンピオンシップで優勝した、世界一のバリスタ(第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン)が歴史、地理から時事問題、嗜み方まで、コーヒーの教養を1冊に詰め込みました。
本書の話題の一部
・欧米のエスプレッソに対し、なぜ日本ではドリップが主流なのか?
・世界や日本でコーヒーが飲まれ続け、カフェがなくならない真因
・ファストフード店やコンビニで提供される低価格高品質のコーヒーの裏側
・気候変動により存続が不安視されているコーヒー栽培
・世界一のバリスタが教える家でできる簡単で美味しいドリップの手順
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者・三宅香帆氏との対談も収録。
読書に欠かせないコーヒーの魅力をバリスタと文芸評論家が語り合います。
※本書は『世界のビジネスエリートは知っている教養としてのコーヒー』(2023年)を加筆修正のうえ新書化したものです※