雨で血痕が流れてしまい…
いっぽう現場には重要な証拠が残っていた。現場付近で不審な女が目撃されたほか、玄関や約500m離れた公園に奈美子さんとは違う人物のB型の血痕 があったのだ。
「犯人は刃物で自分も切り傷を負ったとみられ、公園の水飲み場で血を洗い流した形跡がありました。落ちていた血の量は多く、犯人は大量に出血する傷をタオルかハンカチで押さえたものの、血に浸ったタオルからしずくがボトボト落ちるような状態で移動したとみられました。
このため公園で血を洗った後も出血は続き、逃走経路に血痕が残っている可能性が高いとみられました」(同)
血痕が路上などに広く飛び散っている場合、血液成分に反応して青白い光を放つ「ルミノール」という試薬を噴霧して血を探す「ルミ検」と呼ばれる鑑識手法がある。
発光強度が微小なため夜にしかできないこの手法で捜査本部は、公園からどの方向へ犯人が逃げたかを調べようとしていた。だが、ここで捜査はつまずいたという。
「事件翌々日の11月15日に雨が降ったんです。降り止んだ後にルミ検が行なわれたようですが、結局血痕は見つけられなかった。
公園のそばで犯人が車に乗るなどして血痕がその先に続いていなかったことも考えられますが、雨で洗い流された可能性が高いと捜査幹部らも考えていました。いずれにせよ鑑識活動を尽くしきれなかったわけです。
事件から2日間もルミ検を行なわなかったのは、捜査の手のうちを記者に知られたくない捜査幹部が遅らせたからではないかとの見方までありました」(同)
それから四半世紀を超える時間が流れた。航平さんと共に別の家に引っ越した後も、悟さんは犯人が捕まった時に現場検証を行なえるように現場の部屋を借り続け、支払った家賃の総額は2200万円を超えた。
さらに悟さんは殺人罪の時効撤廃を求め、2010年の刑事訴訟法改正では時効の撤廃が実現した。













