紛争が解決できない4つの主要因

以上が、冷戦から2025年現在までの国際安全保障の対立状況の大まかな流れである。繰り返すが、1990年代のポスト冷戦時の期待溢れる時代から人類の社会は大幅に劣化し、前述したように戦争の時代に完全に突入している。

今後も流血の紛争が続くことは疑いないが、紛争が解決できない主要因を4つ挙げておきたい。

1つ目は、これまで論じてきたように、非民主主義陣営、あるいは権威主義国や独裁国と言い換えてもいいが、ロシア、中国、イランを中心にそれらの陣営が勢いを増していることだ。彼らは自分たちのサバイバルのために、自由や民主主義を弾圧し続けるしかない。

そんな彼らの勢力圏が拡大するということは、理不尽な暴力がどんどん拡散するということを意味する。そして、本来なら彼らの暴走を止めるべき西側、とくにその盟主だった米国が「世界の警察官」をやめている。米国が介入しないということは、非民主主義陣営を誰も止めないということになる。

2つ目は、その他の各地域の細かな紛争を止めるメカニズムが、もうないということだ。前述したように、ロシアと中国が拒否権を持つ国連安保理は完全に機能崩壊している。各地域の調整機関はあるが、安保理のような強制力はない。

そうなると西側の主要国が独自に仲介を展開するということしかないが、その主役たる米国がそうした役割を拒否する傾向にあり、結果的に各地域紛争は放置される。逆に力で権力や不当利益を得ようと考える勢力は、国際社会が介入しないことを予期して、武力による傍若無人な行動に出ることも考えられる。

国連本部
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