拡大し、増加する非人道的な暴力・紛争
21世紀も四半世紀が過ぎた2025年現在、世界には出口の見えない国際紛争が続いている。
ロシア軍のウクライナ侵攻は、実質的には2014年からウクライナ東部で局地戦として続いていたが、2022年2月、プーチン大統領が全面侵攻を命じたことで本格的な侵略戦争になった。戦力に勝るロシア軍に対し、ウクライナは〝西側〟各国からの支援を得て抗戦し、東部・南部の一部国土を占領されながらも持ちこたえている。
2025年1月に再登板した米国のトランプ大統領が停戦仲介に乗り出すも、話は平行線でまとまらない。かといって、ロシア軍もウクライナ軍も相手を撃破する戦力はなく、ロシア軍が若干優勢の傾向で膠着状態に陥っている。
ウクライナ側は祖国防衛戦なので、現有の戦力で防戦が可能なら、抵抗を止めることはない。むしろプーチンがロシア軍に撤退を命じれば、その瞬間に戦争は終わる。しかし、侵攻初日に彼自身の言葉で大義(あくまでプーチン側の)を宣言してしまった以上、自分のメンツと自己正当化を最優先するプーチンは、自分の思惑がミスだったことを認めることになるため、戦争をやめない。彼は、ロシア国民に「弱気だな」と思われかねないことは絶対に言わない。つまり近い将来、戦争が終結する要素は残念ながら見あたらない。
他方、中東ではパレスチナのガザ地区が、人道危機と呼んでいいレベルの悲惨な状況になっている。もともとガザを支配するパレスチナ組織「ハマス」とイスラエル軍は散発的に交戦してきたが、2023年10月にハマスが壁を破壊してイスラエル側の住民や軍基地を奇襲する大規模なテロを成功させる。
対するイスラエルはハマス殲滅を目標にガザを攻撃。ハマス戦闘員は市内に隠れているため、イスラエル軍はガザ住民を丸ごと殺戮する作戦を強行した。ハマスはテロ攻撃時にイスラエル側から人質を拉致しており、人質解放をめぐって停戦交渉が行われているが、イスラエル側の「ハマス解体の要求」とハマス側の「イスラエル撤退の要求」は天地ほど乖離しており、こちらも解決の要素はまったくない。戦力が圧倒的なイスラエル軍によるほぼ一方的なガザ攻撃は継続され、一般住民の犠牲者が増え続けている。
なお、パレスチナ側を支援してイスラエルを攻撃したレバノンの民兵組織「ヒズボラ」に対してもイスラエルは、拠点の町を大規模空爆で破壊して半ば壊滅させ、さらにハマスやヒズボラの背後にいたイランと2024年4月と10月に直接的な交戦となり、2025年6月にはイラン本国を大規模に空爆した。最終段階では、イランの地下核施設を攻撃するために米軍も空爆に参加した。













