投資家は今後も粛々と家賃の引き上げを進める
家賃の引き上げを受け入れない理由として、周辺相場に比べて賃料が割高であることを証明する必要があるためだ。現在の相場では周辺の空き家は賃料を引き上げているため、据え置きが適正であるということを証明するのは難しい。
また、平日に仕事を休んで簡易裁判所まで出向くことや、話がこじれて弁護士に依頼したときのコストを考えると、前述のAさんのように、一定の賃料引き上げを受け入れるという姿勢で価格交渉をするのが合理的な行動となる。
これまで多くの大家が、「借主が家賃の引き上げに応じなかったから」と法的手段に打って出なかったは単に費用対効果が低かったからであり、現在のような家賃上昇局面では強気に出やすいことは忘れずにいたい。
「今の家賃上昇は一過性のものなのでは」という声もあるが、期待は薄い。投資用物件のポータルサイトを運営する楽待によると、25年7〜9月の一棟アパート、一棟マンション、区分マンションのいずれも価格が上昇しており、特に一棟アパート価格は過去最高を更新している。
高値で購入している上、金利上昇やインフレに伴う修繕費の高騰で維持費も上昇しているため、今後も投資した資金を回収するために投資家は今後も粛々と家賃の引き上げを進めるだろう。
家賃上昇に怯えながら暮らすという光景
また、高価格帯の物件では、契約期間が終了すると自動的に契約が終了する「定期借家契約」も増えている。こちらは自動的に更新されないため、大家が提案する家賃引き上げを呑まなければ強制退去となる。
デフレの時代には「リスクを負って住宅を買うより、賃貸のほうが賢い選択肢だ」と公言する有識者もいたが、実際に起きたのは不動産を持つ側の人間の立場が圧倒的に強く、借りている側は家賃上昇に怯えながら暮らすという光景だった。
デフレからインフレへの転換が起きる中、現在、20代から30代の収入が高い若手社会人の間で流行しつつあるのが、住宅ローンを組んで1LDKの部屋を購入するという動きだ。
これまで、ファミリーやDINKS向けで需要が読みやすい3LDKや2LDKに比べ、1LDKは購入層が限られており販売が難しいというのが定説だったが、「都心エリアの小規模物件であれば、1LDKの部屋から売れる物件もある」と大手不動産デベロッパーの社員は語る。
例えば、8000万円の部屋を50年ローンで購入すれば、月々の負担は17万円程度となる。













