与信を使ってどれだけ不動産に資金を投じられるか

上がり続ける家賃を払い続けるくらいなら、資産になる物件を購入するほうが合理的だという発想だ。前述のデベロッパー社員は「ライフスタイルが変われば売ってもいいし、転勤や駐在を見越して賃貸物件として運用することも考えて購入する方が多い」と分析する。

一流企業に務めるような感度の高い若手社会人にとって、勤務先の与信を使ってどれだけ不動産に資金を投じられるかというのはNISAやiDeCoと同じく、「やらなくては損」という感覚になりつつある。

前述の家賃上昇に憤るAさんも、現在は近場で中古マンションを探している。「恵比寿周辺だとファミリー向けは1億円を軽く超えて手が出ないが、1LDKや2LDKであれば」と、不動産ポータルサイトを眺める日々だという。

搾取される側からの脱出を望む若者の行動が不動産価格の高騰に一役買っているという皮肉な光景だが、東京に限ればこうした潮流はしばらく続きそうだ。

文/築地コンフィデンシャル