「市長として中退ではなく除籍でしょうか」

田久保市長は7月に一度表明した辞意を撤回した会見で、「わたしに与えられた使命を全身全霊を傾けて実現してまいりたい」と上ずった声で続投の決意を強調したことがあるが、その時とは涙の量が明らかに違う。あたりにはたちまちカメラのシャッター音が響き、フラッシュが光る。

田久保市長は、騒動で迷惑をかけた職員だけでなく、自分に好意的な市民との出会いを思い出しても泣いた。

10月31日、不信任決議案可決後の囲み取材で涙を流す田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)
10月31日、不信任決議案可決後の囲み取材で涙を流す田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)

「市民の皆さんが話しかけてきていただいて、声援送ってくださって『頑張ってください』『負けないでください』って(言って)いただいて、嬉しかったです。

さっきも(不信任決議の文面で)『平然としてる』とか『図々しい』とかありましたけれども、実は決してそういうわけではなくてですね、街中や食事してる時も知らない方が声かけていただいて、ちょっと思い出すと泣けてきちゃうんですけども…」

そう言って顔を覆う田久保市長。これまで頑なに隠していた感情が一気にあふれ出たかのようだ。

見かねた秘書広報課の職員がティッシュの箱を差し出すと、受け取った紙ではなをかみ、また市長は話し続けた。

そんな中、TBSサンデージャポンの名物レポーターがいつものように「市長を務めたことの卒業証書は欲しいですか」とツッコミを入れる。

これに田久保市長は「私の市長としての卒業証書は市民の皆さんからもすでに頂いてると思っております」と優等生的な答えを返す。

しかし在任5カ月での卒業は早すぎる。サンジャポがさらに「任期を務められなかったことでの中退では?」と切り込むと、市長はムッとすることもなく「そうですね。私からの申し出ではなく今日は議会の決定を受けてのことですので、除籍ということなのかなという風に思っております」と返答したのだ。

10月31日、不信任決議案可決後の囲み取材で目に涙を浮かべる田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)
10月31日、不信任決議案可決後の囲み取材で目に涙を浮かべる田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)

 東洋大から除籍されながら怪しげな“卒業証書”を見せて大卒と名乗ったのが騒動の原点となる学歴詐称疑惑だ。ここでまた除籍という言葉を使う自虐ネタには報道陣も虚を突かれてずっこける。感情が高ぶっても会見の主導権はメディアに渡さないという田久保市長流の発信術かもしれない。