偽物を提出しても罰則はない?
10月1日施行の要綱は、市長に卒業証明書や住民票などの提出を義務づける内容で、田久保市長は高校の卒業証明書を提出するという。
だが、そもそも学歴詐称疑惑は、5月の市長選で初当選した田久保市長が選挙中から「東洋大法学部卒業」と名乗り、当選後も“卒業証書”と称する書類を市職員に示してこの経歴が市広報誌に掲載されたことが問題になった。
この時期に「彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」との告発文書が市議らに送られ、疑惑が浮上。田久保市長は7月に「大学で確認すると除籍だった」と認めた。
「じゃあ卒業証書は偽物だったんじゃないかという話に当然なります。しかし田久保市長は、公職選挙法違反容疑などで刑事告発されたことを理由にそのブツを公開しようとしません」(前市議)
公開を求める市議会と対立した田久保市長は自分への不信任が議決されると議会を解散。10月19日の出直し市議選を前に言い始めたのが要綱新設だ。
理由を田久保市長は「事務手続きはこの件にかかわらず、もう少し整理、きちんと効率化したほうがいい」と考えたからだと説明する。
これには当然「自身の卒業証書をオープンにしていないのにこのような要綱を定めることは論点ずらしとしか思えない」との質問が出たが、田久保市長は「市長としてできるだけ事務手続きを整理、簡略化するのは仕事の1つ」と受け流す。
要綱では提出された証明書の真偽の確認手続きを定めず、偽物を提出しても罰則はない。となると、今回と同じことが繰り返されてもおとがめなしとなりそうだが、学歴を証明するために提出する書類を卒業証書ではなく「卒業証明書」としたことで「それ以上の証明が必要ありません」と田久保氏は説明。卒業証明書なら自分が疑念を持たれた“偽造”は見抜けるということらしい。
だが、実効性も怪しい要綱の趣旨が守られたとしても、別の問題がある。市関係者は5月の選挙前の状況をこう証言したことがある。
「(選挙の際)出馬にあたって新聞2紙から経歴のファクトチェックとして高校と大学の卒業証書の提出を求められた田久保さんは『見つからなかった』とイラつき、『もう中卒でいい』と投げやりになっていました。
しかし後に大学の卒業アルバムがあったということで、その集合写真を見せました。写真は顔の判別がしづらいので正直、本人かどうかわかりませんでしたが、とりあえずそれで確認できたことになっていました」(♯3)
候補者経歴として「大卒」とメディアが報じたことは公選法違反にはならないと田久保市長は主張し、当選前の学歴詐称疑惑の追及は最近下火になっているが、会見では候補者の学歴確認はどうするのかとの質問がでた。
これに市長は、立候補者は一般人なので制度の対象にはならない、と応じた。これは当然だが続いて本音も飛び出した。
「そこの確認はむしろ報道機関の皆さんのほうで今ファクトチェックされてると思いますけれども、そちらのほうでされるものなのかなという風に私は認識しております」
自分が候補者の時に「大卒」と報じられたのはメディアのチェックミスが原因だ、との主張ともとれるこの発言をした市長は、会見終了後に市役所の食堂から撮った写真とともに「イジワルな質問もいろいろされましたしお腹が空きましたー。」とXアカウントに書き込み、メディアとの対決ムードを高めている。