不動産デベロッパーにとっても旨み
物件を開発する不動産デベロッパーにとっても、学生寮ビジネスは旨みがある。まず、一部屋あたりの面積を狭くすることができるため、通常の賃貸マンションに比べて多くの戸数を確保できるというメリットが大きい。
一方で家賃は周辺の物件と変わらないため、面積あたりの収益性は高い。異動やライフスタイルの変化で入退去が不定期な社会人と違い、学生は一度入居すれば4年間退去しないことが多いため、稼働率を高く維持することができる。
立地という点でも、駅から遠かったり、線路沿いで騒音があったりと分譲用のマンションとして開発するにはやや難がある土地を安く仕入れて活用することができるという点も魅力的だ。
そもそも一つの大学の学生に特化するのではなく、周辺の複数の大学に通う学生をまとめて受け入れるため、高田馬場や日吉、本郷三丁目といった大学そばの立地である必要もない。
裕福な学生が集い「普通の街」になる高田馬場
地方から上京する学生の減少と並行して大手資本による「囲い込み」が進むことで、学生街の消失は加速している。
高田馬場や早稲田では近年、純喫茶「ロマン」や書店「文禄堂早稲田店」、町中華「早稲田軒」といった、早大生に愛されていた名店が次々と閉店している。
高田馬場の駅前では現在、大規模な再開発が計画されている。中央日本土地建物と日鉄興和不動産が主導する形で高田馬場駅周辺の老朽ビルを改装し、オフィスや住宅、ホテルなどが揃う街として生まれ変わる計画だ。
現在の雑多な街並みを一掃することで、ターミナル駅としての価値を高めるという方向に行政がかじを切った形となる。
未成年の飲酒取り締まりが厳しくなった結果、高田馬場駅前の大学生御用達の居酒屋はどんどん姿を消し、夜になると肩を組んで都の西北を歌ったり酔って吐いたりといったかつての光景は過去のものとなりつつある。
近い将来、高田馬場も駅前のロータリーが綺麗に整備され、木造アパートや学生寮に住んでいたような学生も消え、そこには首都圏の中高一貫校出身者や月に十数万円かかるような学生寮に住む裕福な大学生だけが歩く「普通の街」になっていくのだろう。
取材・文/築地コンフィデンシャル