入居待ちも! 築浅マンションのような令和の学生寮
一方、こうした動きと逆行するかのように近年増加しているのが、大手不動産デベロッパーによる、民間運営の学生寮だ。
東急不動産の「キャンパスヴィレッジ」や三井不動産レジデンシャルの「カレッジコート」、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハイヴ」や日鉄興和不動産の「リビオセゾン」、中央日本土地建物の「バウスクロス」など、大手デベロッパーが各地でブランドを冠した物件の開発を積極的に進めている。
少子化が進み、地方から上京する学生が少なくなる中、学生だけを相手にした商売は勝算が薄いようにも見えるが、さにあらず。新しく開発された物件はすぐに埋まり、入居待ちも多いという。
人気の背景にあるのが、地方在住の豊かな家庭をターゲットとしたコンセプトだ。前述の物件の一つを実際に取材してみたが、これまで持っていた「学生寮」のイメージが一瞬で覆された。
建物の外観は綺麗で清掃が行き届いており、入口には宅配ボックスが設置されている。内廊下でプライバシーが保たれており、もちろん廊下に漫画本や扇風機が置かれているといったこともない。築浅のマンションのようだ。
シアタールーム、オートロック…「清潔で安全・安心」
個室のスペースは15㎡程度とやや狭いが、備え付けのテーブルやベッド、冷蔵庫などがコンパクトに配置されており、圧迫感は感じない。浴室とトイレはセパレートタイプで、浴室乾燥機まで備えているというので驚きだ。
食堂やラウンジ、共用キッチンなどの共用部も充実しており、シアタールームのような豪華設備が付いている物件もある。
日中は管理人が常駐している上にオートロックや防犯カメラで安全が確保されていることはもちろん、毎日の朝食・夕食は管理栄養士が監修した料理を提供。入居者同士の交流を促進するイベントも開催しており孤独や孤立を防ぐなど、サービス面でも至れり尽くせりだ。
地方に住む親にとっても、このようなハード・ソフト面でのインフラが整った施設に預けておけば生活面の問題はない上、同級生のたまり場になって勉学がおろそかになるという心配もないということで好評なようだ。
令和の日本社会においては、厳しい環境の一人暮らしで経験を積ませるよりも、より清潔で安全・安心な環境を整えたいというのが親心となっている。
気になる費用だが、東京23区内の物件の場合、家賃・共益費を含めて10万円前後、これに食事代が2〜3万円程度かかるのが一般的だ。決して安い金額ではないが、一人暮らし用の賃貸物件の家賃が10万円を超える中では、納得感のある数字だろう。