ガソリンの暫定税率廃止は現実のものとなるのか?

ガソリンの暫定税率の廃止も国民民主が強く求めている内容だ。2025年8月から暫定税率廃止に向けた与野党による実務者協議が始まっており、年内のできるだけ早い時期に廃止する方向で検討している。

しかし、自民党の宮沢洋一税調会長が廃止に向けて譲歩する姿勢を見せつつも、野党側に代替財源の提案を求めて議論は平行線をたどり、与野党の溝は埋まっていない。国民民主の玉木代表は、参院選の結果を受けてすみやかに廃止するべきと述べるなど、強く反発していた。

国民民主との連立で行方が注目されるのは、年収の壁の引き上げと暫定税率の廃止だ。しかし、年収の壁を178万円に引き上げると国と地方で年間7.6兆円(玉木代表は2.4兆円と反論)、暫定税率の廃止で1兆円の減収になるとの試算がある。

手取りが増えることや、ガソリン代が安くなることは、生活費の負担に苦しむ国民にとっては歓迎すべきだろう。しかし、安易に国債を乱発すれば、財政悪化を懸念した通貨安が進行しやすい。

そして、「高市トレード」による株高が示す通り、高市氏は積極財政派だ。記者会見においても、政府が民間の呼び水となる投資を拡大させ、成長率と税収増を生むと発言した。2024年の総裁選では「金利をいま上げるのはアホやと思う」と発言。日銀を牽制して物議を醸した。

高市早苗新総裁(本人SNSより)
高市早苗新総裁(本人SNSより)

積極財政や金融緩和路線は第2次安倍政権のアベノミクスを彷彿とさせるが、当時と今とではまったく違うものがある。為替相場だ。第2次安倍政権がスタートした2012年12月のドル円は1ドル80円台という超円高だった。現在は150円台の円安水準である。

円安とインフレは密接に結びついている。輸入に頼っている日本では、円の購買力の低下が物価の上昇に繋がりやすいのだ。高市氏は物価高対策としての消費税率引き下げについても「選択肢として放棄していない」と述べているが、消費減税も円安要因の一つになりかねない。

新発10年物国債利回りは高水準が続いており、金利上昇によって住宅ローン金利が上がる懸念もある。

手取りを増やすことや暫定税率の廃止、消費減税は聞こえがいいものの、インフレの助長という副作用を生じさせることになりかねないのだ。