国民民主の悲願である「年収の壁178万円」引き上げはあるか?
高市新総裁の就任会見で、最も印象的だったのは裏金議員に対して「人事に影響はない」ときっぱり言い切ったことだ。
裏金議員については、政倫審で説明責任を果たして党の処分を受け、さらに国政選挙で有権者の審判を潜り抜けたとし、国民の代表として議席を得たからには働かなければならない、と論理的に話を進めた。
そして、その人を選んだ理由を聞かれれば「私が説明をいたします」と発言したことには、この問題にケリをつけて堅実な政権運用に移行しようとする、強い決意を見て取ることができた。
2024年の総裁選で重要項目に掲げていた靖国参拝についての態度を改めたところを見ても、自身の思想や考えよりも自民党のトップとして周囲を動かしていこうとする姿を垣間見ることができる。
高市新総裁は国民の関心が最も高い、「経済対策」に力を注ぐ可能性が高いのだ。
足元では外堀が埋まっていることも特徴的である。少数与党という苦境を脱するための連立政権の樹立が必要になってくるからだ。
高市氏は連立拡大に意欲を示していた。有力候補と見られているのが、国民民主党と日本維新の会だ。日本維新の会の吉村代表は連立の打診があれば「協議するのは当然」と前向き。国民民主の玉木代表は「方針をしっかり見定めたい」と語り、すり合わせ次第で連携する可能性を示唆した。
この2つの政党のなかでも、有力な連立候補と目されているのが国民民主党だ。
高市新総裁は10月4日に公明党の斉藤代表と会談しているが、その際に斉藤代表が「大阪副首都構想」に懸念を示した。「大阪都構想」は2度にわたって住民投票を行なった維新の会の悲願とも言えるものだ。これを公明党が牽制しているとなれば、連立入りは難しくなる。
部分的に連携するパーシャル連合も視野に入るが、それを実行した石破政権は参院選で惨敗した。高市新総裁が連立拡大の意志を示しているのは、この失敗を活かしてのものだ。いよいよ国民民主との連携が現実のものとなりそうだ。
国民民主の一丁目一番地は手取りを増やすことだ。年収の壁の引き上げを巡っては、2024年12月に幹事長の合意文書で178万円への引き上げを目指すと明記されたものの、最終的に交渉が決裂した経緯がある。
玉木代表が語る「方針」は、年収の壁の引き上げである可能性は高そうだ。