高市次期首相が積極財政を掲げる限り… 

今後も住宅ローン金利の引き上げは続く可能性が高い。日銀が9月に開いた金融政策決定会合では、9人のメンバーのうち、2人の審議委員が利上げを提案。

後日公開された議事録では、「前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれない」「海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況と考える」といったコメントもあった。

日銀の利上げに慎重姿勢を見せる高市早苗政権が誕生することで利上げのタイミングが後ズレする可能性はあるものの、政策金利を上げなければ円安が進み、インフレが加速しかねない。市場の焦点は政策金利を「上げるか上げないか」ではなく、「いつ上げるか」に移っている。

既に将来の金利の先行指標である長期金利は上昇が続く。2016年から約6年間、0%台だった30年物国債の金利は上昇傾向にあり、現在は3%台で取引されている。

金利上昇を抑えるためには財政赤字の削減が不可欠だが、次期首相となる見込みの高市氏が積極財政を掲げる限り、難しいだろう。インフレが収まらない中、近い将来、0%台の住宅ローンは過去のものとなるだろう。

早期の利上げには否定的とみられる高市氏だが…
早期の利上げには否定的とみられる高市氏だが…
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住宅ローンの支払い負担が手取りの増加額を上回る状況となるのは確実

現在、住宅ローンを借りている人の約8割が変動金利を利用しているとされるが、今後、彼らは金利上昇のたびに支払いの負担が重くなることになる。Bさんの場合、住宅ローン金利が1.5%となれば、月々の支払額は30万円となり、現在よりも4万円程度高くなる計算となる。

昨今の賃上げブームによりBさんの勤める大手ソフトウェア企業も賃金を引き上げているが、若手社員に比べ、中堅社員の引き上げ幅は限定的だ。

月々の給料が上がったとしても、そこから税金や社会保障費が引かれるため、現状の賃上げペースでは、住宅ローンの支払い負担が手取りの増加額を上回る状況となるのは確実だ。

タワマンを購入すればすぐに数千万円の含み益が誕生し、転売を繰り返すことでサラリーマンでも億を超える財産を築くという時代は終わりに近づいているのかもしれない。

取材・文/築地コンフィデンシャル