返済負担はジリジリと重くなりつつある 

都内では新築でも中古でも1億円を超え、「下がる要素がない」とまで言われていたマンション市場に変調が生じている。発端となっているのは、都心のタワマン相場を下支えしていた銀行の融資姿勢の見直しだ。

一部の銀行が「タワマン転売」を問題視し、融資を絞り始めたことが明らかになっている。「令和の貸し渋り」が始まりつつある中、住宅ローン金利の上昇も相まって、マンションを購入した人々の返済負担はジリジリと重くなってきている。

「銀行がローンを貸してくれないせいで、人生計画が狂った」

東京都・勝どきの某人気タワマンに住むAさんはこう憤る。近隣のタワマンへの住み替えを検討していたが、新居の住宅ローンの審査が下りず、諦めることとなったのだ。

事前審査では何の問題もなかったものの、本審査になると各行とも融資を断ったり、想定よりも融資額を引き下げられたりで、望むような条件で住宅ローンを組むことができなかったという。

銀行側は理由を明かしていないが、「短期間での買い替えの場合、銀行側が転売を警戒しているのでは」と仲介会社からは説明を受けたという。この仲介会社でも、このようなケースは初めてではないという。

短期間でのマンション買い替えの場合、銀行側が転売を警戒し、以前よりもローン審査が厳しくなるケースもあるという(写真はイメージです)
短期間でのマンション買い替えの場合、銀行側が転売を警戒し、以前よりもローン審査が厳しくなるケースもあるという(写真はイメージです)

タワマン高騰を押し上げたのは「半住半投」のサラリーマン  

マンション価格が急騰する中、新築マンションを購入し、すぐに転売することで利益をあげる手法がもてはやされ、都心の人気のタワマンに転売目的の人々が群がっているのは周知の事実だ。

東京カンテイによると、8月の東京都心6区の中古マンション(面積70㎡換算)は前年同月比33.5%増の1億7030万円だった。実需が中心であるさいたま市や千葉市の同時期の上昇幅が4〜5%程度だったことからも分かる通り、東京一極集中が加速している。

都心部の不動産の高騰は投機マネーの流入によるものだ。

もっとも、投機マネーといっても、タワマン投資の場合、富裕層や海外投資家、中国人といったプレーヤーだけではない。

年収1000万円を超えるエリートサラリーマンが住宅ローンを使って将来の値上がりを見越した半分居住、半分投資の「半住半投」のプレーヤーがこのマーケットに押し寄せたのだ。

年収1000万円を超えているというだけで1億円、夫婦とも高収入のパワーカップルであれば2億円を融資するという銀行の姿勢があったからこそ、豊洲や勝どきのファミリータイプの3LDKが2億円近い価格で取引される現在の市況が肯定されていた。

しかし、あまりにも急激な価格上昇は、ひずみをもたらした。購入と売却を繰り返す「空中族」の中には1年間で2回、3回と融資を受けて転売を繰り返すという、住宅ローンの理念から外れた取引も増えていた。

引き渡し前の新築タワマンの「含み益」を前提に、次に値上がりしそうな物件を探すといった、限りなく黒に近いグレーな話すら一部のインフルエンサーが「投資手法」として広げていた。