金利が上がって、さらに月に1万円も支払いが増えるのは正直厳しい
銀行側も手数料収入が見込めるため、これまでは収入を証明する書類さえあればグレーであろうが融資する姿勢を続けていた。
しかし、住宅価格の高騰が政治マターになり、都政や国政レベルでもテーマとして取り上げられるようになった中、銀行側も政治や行政からの圧力を受けて審査を厳格化せざるを得なくなったとみられる。融資が絞られると必然的に、野放図な転売は阻止されることになる。
Aさんの場合、今回の引っ越しはより広い部屋を求めてのものだったが、その部屋は分譲価格から3倍近い価格で取引されており、引っ越しに伴い売却となれば1億円近い利益が出る予定だった。まだ入居から2年も経っていなかったため、転売目的だと銀行側に受け取られた可能性がある。
銀行の融資姿勢の変化は、転売防止だけではない。足元では金利上昇というファクターが加わっている。みずほ銀行は10月1日、変動型の住宅ローン金利を0.25%引き上げた。新規契約者に適用する最優遇金利は0.775%となり、2015年12月以来の高水準だ。
「金利が上がって、さらに月に1万円も支払いが増えるのは正直厳しい」
東京都港区、芝浦のタワマンに住むBさんはこう嘆く。
「無理をしてまで貸さない」という戦略が浸透
Bさんは2022年に9500万円のローンを組んで自宅を購入したが、当初24万円程度だった月々の支払いは2度の利上げで26万円程度になるという。
住宅価格の高騰で数千万円の「含み益」を得ているBさんだが、中学受験を控えた子供の教育費をはじめ絶対に削れない固定費が多く、「儲かっているという感覚はまったくない」とため息をつく。
みずほ銀行は21年に変動金利を当時の最低水準だったネット銀行並みの0.375%に引き下げるなど、メガバンクの中でも住宅ローンの貸出に積極的な銀行として知られていた。しかし、金利上昇局面に転じると態度を一変、金利引き下げ競争から身を引きつつある。
住宅ローンを主力商品と位置づけるネット銀行も同様だ。
PayPay銀行やSBI新生銀行、auじぶん銀行といった各行が競うように低金利競争を繰り広げ、24年には0.2%台で貸し出していた銀行もあったが、現在は最も低い銀行でも0.5%台となっており、かつて低金利の代表格だったauじぶん銀行は今年に入ってすでに2回金利を引き上げ0.8%台となっている。
利上げにより各行とも収益環境が悪化する中、「無理をしてまで貸さない」という戦略が浸透している。