これ以上の予算削減余地はあるのか?

2023年10月から受信料を1割引き下げたNHKは猛スピードでスリム化を進めてきた。2024年度の支出額は前年から93億円減少している。2025年度は156億円も削減する計画だ。

収支バランスの均衡を図る2027年度の事業支出は5900億円を見込んでいるが、この予算は2024年度の支出額より670億円以上少ない数字だ。

スリム化を進めるNHKだが、事業支出全体の半分ほどを占める国内放送費や、2割ほどの給与はほとんど変化していない。退職手当・厚生費など削りやすい項目から削減を進めているようだ。

それがひと段落すれば番組制作費や人件費のカットに駒を進めなければならないはずだが、コンテンツ力の低下を招きかねない。経営陣は難しいかじ取りを迫られているはずだ。

NHKの経営効率化で避けて通れない議論が民営化だ。2004年にプロデューサーが巨額の制作費を着服していたことが明るみになった際、民営化が積極的に論じられるようになった。2005年には自民党議員有志による勉強会「NHKの民営化を考える会」も発足した。

さらに近年では、「NHKをぶっ壊す」という公約を掲げたNHK党が注目を集めてスクランブル放送の議論は活発になったものの、民営化についての世論は下火になっている。

NHKはホームぺージの質問集で、「放送法を改正してNHKを民営化することは、選択肢のひとつとしては考えられるかもしれません」と一定の理解を示しているものの、「視聴率競争によって、内容は優れているものの、視聴率が取れない番組は続けられないとなると、番組の画一化や質の低下が懸念されます」と主張している。

これは確かにその通りで、ニュースや災害に関する最新情報、教育、伝統芸能などの公共放送ならではのコンテンツは、視聴率競争やスポンサーの意向によって公共性が歪められたり、コンテンツそのものがテレビから消失したりする可能性がある。

一方、バラエティや音楽、ドラマ、スポーツ、アニメはどうか。NHKは視聴率競争に巻き込まれることを懸念しているが、実際に連続テレビ小説は新しいシーズンが始まり、終わるたびに「視聴率好調」「過去最低を更新した」などと報じられ、成功だったか失敗だったかが話題になっている。

NHKが運営するアプリは多数あるが…(画像/集英社オンライン編集部)
NHKが運営するアプリは多数あるが…(画像/集英社オンライン編集部)

ドラマの作り手が視聴率を意識しないわけはなく、むしろ民営化して視聴率競争にさらされたほうが良質な作品を作れるのではないか。エンタメにおいてもNHKのクオリティは極めて高い。企業のエンジニアや学生が非常識なお題に挑戦する「魔改造の夜」などはXでトレンド入りするほどだ。

NHKは売名行為や営業広告を禁止しているため、企業名を出すことはできない。しかし、「魔改造の夜」は誰が見てもどの会社かがわかるようになっており、常識破りの挑戦的な番組である。この番組なども、スポンサーを募って企業の採用活動やブランド構築に役立てたほうがウィンウィンの関係を築けるように見える。