元バンドメンバーが語る桜塚やっくん
2013年10月5日、山口県内の高速道路で起こった自動車事故により、桜塚やっくんは37歳の若さでこの世を去った。あれから12年。命日には、今も神奈川県川崎市の公園墓地に多くのファンや関係者が足を運び、その存在の大きさを偲んでいる。
TBSの音楽番組の企画で結成された、やっくんがボーカルを務めるロックバンド「美女♂men Z」でベースを務めていた伊織殿もその1人だ。
現在は芸名を本名に戻しTaiGa(タイガ)として歌手活動を続けている。墓に手を合わせたTaiGaのスマホから流れるのは、桜塚やっくんが作詞を務めたバンドの代表曲『絆』。
彼はなぜ今も、墓参りを続けるのか。あの事故はなぜ、起きてしまったのか。
「たとえ世界が敵になって 無実の罪問われても、何度でも立ち上がれる ほら僕には素敵な仲間が…」
その音色に導かれるように、彼は少しずつ当時の記憶を語り始めた。
「お墓参りの時はいつも、美女♂men Zの曲をかけるんです。実はこの曲、当時やっくんを貶めるようなニュースが世に出て、仕事が激減しボロボロになった時期に作られたものなんです。
結論から言うと、その騒動はやっくんがハメられたみたいなもので……。僕もそのニュースが出た頃、他の芸能事務所の甘い誘いに乗ってしまい、やっくんを裏切りかけたこともありました。
だけど、ギリギリのところで裏切ることもなく、最後までメンバーとしてやってこられました。そういった1つ1つのストーリーが、この曲をより強くさせているのだと思います。やっくんが亡くなってしまった後、僕にとっても一番の思い出の曲となりました」
そう言うとTaiGaは、手に持っていた花を墓前に供え、掃除をし始めた。毎年、命日になるとたくさんの花が届けられるが、この日は命日より少し前だったため、少ししおれた花が風に揺られていた。
墓の前で手を合わせたTaiGaは、再びやっくんとの思い出を振り返った。