「都会で悪いことをして逃げてきた」と身に覚えのない噂が

半年ほど過ぎた頃である。夫婦は定期的に要請される自治体活動が負担になっていた。その活動は参加、不参加にかかわらず作業費の徴収があった。徴収された作業費は飲み会に使われていた。

そこで「飲み会はやめませんか」と夫婦が提案したことで、住民から「決まりに従わないのは裏切りだ」「地域のつながりが壊れる」といった反発が起こった。

住民側からすれば、移住者を快く受け入れて面倒を見ている。地域の風土的個性に従うのが礼儀だ。その礼儀を反故にしたのだから反発を受ける。しかも、移住者は支援金の恩恵を受けて高い年収を得ている。

当然ながら「税金泥棒ではないか」といった主張が正当性を持つ。そのうち「不法投棄をしている」「都会で悪いことをして逃げてきた」といった身に覚えのない噂が立つ。その夫婦は心身ともに疲れ果てて過疎地域を去った。

都市から田舎への移住が失敗するのはなぜか?「都会で悪いことをして逃げてきた」火のないところに煙を立てられた夫婦の苦悩_2

この他にも、住宅ローンを組んで家屋を購入した移住者がいる。その移住者から、「住民が自宅周辺をうろついて室内を覗き込み、毎日のように噂話をしているのが精神的に耐えられない」といった相談を受けたことがある。

住宅ローンは居住条件が付くので家屋の賃貸化が難しい。移住の際にはフットワークを軽くしておくことが肝心だ。