SNSでは怒りの声が相次ぐ

国交省の発表直後から、SNS上では「絶対嫌だ。高い金払って安全と思われるオートロック住んでるのになんでそこぶっ壊しにくるの。しかも税金で」「なんで税金をつかってストーカーや勧誘促進、犯罪行為の加担をするのか?」といった声が相次いだ。特に実例として取り沙汰されたのが、8月に神戸市で起きた凄惨な事件だ。

20代の女性会社員が自宅マンションのエレベーター内で殺害された事件では、加害者の男がオートロックの玄関で住民の後を追い、ドアが閉まる寸前にすり抜けて侵入したとされる。いわゆる「共連れ侵入」と呼ばれる手口だ。容疑者は過去にも同じ方法で複数のマンションに侵入し、ストーカー規制法違反や傷害容疑で摘発されていたことが報じられている。

再配達の削減に向けて新システム導入を検討(画像/ Shutterstock、以下同)
再配達の削減に向けて新システム導入を検討(画像/ Shutterstock、以下同)

この事件をきっかけに「オートロックは万能ではない」という現実が広く認識され、そこのリスクをさらに上げてしまうような施策に対して懸念が噴出した。

確かに検討が予定されているシステムは、宅配便の再配達削減に一定の効果が見込まれるだろう。しかし防犯アドバイザーで犯罪予知アナリストの京師美佳さんは、その裏に潜むリスクを指摘する。

「最も懸念すべき点は、共通の解錠手段が外部に流出した場合のリスクです。従来のオートロックは物件ごとに異なる鍵管理を前提としていましたが、共通化により一度情報が漏れれば、複数のマンションが同時に危険にさらされる可能性があります。また、配達員になりすました不審者が侵入しやすくなる懸念もあります」(京師美佳さん、以下同)

セキュリティの基本は「入口をいかに限定できるか」にある。しかし、共通コードの仕組みはその性質上、利用者の範囲を広げやすい。数分しか使えないワンタイムパスワード方式であればまだ抑止力になり得るが、管理体制が不十分だと犯罪者に悪用されかねないという。

「利便性と防犯性の両立は重要ですが、安易な共通化はオートロックの存在意義そのものを失わせるリスクをはらんでいます」