新しいシステムで懸念される犯罪被害

実際に、オートロックが犯罪の突破口として利用された事例も報告されている。

「オートロックは本来、防犯の要ですが、過去にはそれを悪用した侵入やトラブルも発生しています。たとえば、宅配業者を装ってエントランスを通過し、住民の信頼を得た上で侵入し、強盗や性犯罪に至ったケースがあります」

オートロックをかいくぐる犯罪も(画像はイメージです)
オートロックをかいくぐる犯罪も(画像はイメージです)

さらに近年では、暗証番号やICカードの管理がずさんな物件で、退去者や外部の者が不正利用する事例も確認されているという。

「共通解錠コードやバーコード認証が外部に漏れれば、犯罪者が正規の手続きを経ずに建物に立ち入る可能性が出てきます。オートロックは『心理的な抑止力』に依存している部分が大きいため、一度突破口が広まれば多数の住民が被害を受けかねません。こうした事例は、管理体制と併せてセキュリティ設計を見直す必要性を示しています」

利便性を優先するあまり、防犯性が軽視されれば「安全な住環境」というオートロックマンションの根本的価値が揺らぎかねない。

とはいえ、再配達削減は物流業界が抱える深刻な課題だ。国は宅配便の再配達率を6%以下に抑えることを目標に掲げているが、2024年時点で国内大手の平均は8.4%。年間で換算すると約5億個もの荷物が再配達されている計算になる。

では、再配達削減と防犯性を両立させる解決策は何か。京師さんは「宅配ボックスの普及」を現実的な選択肢として挙げる。

「宅配ボックスの普及は、防犯と物流の両面で大きなメリットがあります。普及が進めば、荷物を玄関前に置く『置き配』に比べて盗難リスクが格段に下がり、住民の安心感も高まります。特に補助金支援などの後押しがあれば、管理組合や賃貸オーナーも導入しやすく、結果的に再配達削減やCO₂排出抑制といった社会的効果にもつながります」