「芸術論の巻」(ジャンプ・コミックス第200巻収録)

今回は、両さんが「点描画」の名手として、アート界でひと儲けを企むお話をお届けする。

両さんが手がけたという細密な絵には、実はとある秘密があって……?

「点描画」とは、線ではなく点の集合や非常に短いタッチで表現する技法を用いて描かれた絵を指す。

だが、本作で描写されているような、単色の点によるものだけを指すわけではない。本来は、異なる色彩の複数の点や線を隣り合わせて配置することにより、絵の具を混合させずに求める色を表現する手法のことだ。ゴッホの絵を思い浮かべると、すぐに合点がいくだろう。

普段から目にしているカラーの印刷物をよーく見てみると、赤、青、黄、黒の小さな点で構成されていることがわかる。また新聞や掲載されている写真は、黒の点の大きさの差だけで画像が表現されている。これは、「週刊少年ジャンプ」のモノクロ印刷ページも同様だ。

また、コンピュータによって作画されたドット絵もまた、点描画の一部問と言えないこともない。初期ファミコンソフトの、四角いドットがもろに視認できてしまう荒い画像に、イマジネーションをかき立てられたオッサンゲーマーは多いはずだ。そう、点描は私たちの日常にあふれている、魅力的な手法なのだ。

なお、点描で描かれた珍しい両さんの絵を披露しておこう。点描をアナログ画材で行うには大変な手間と時間を要するため、現代ではめっきり見かけなくなった。

だが点描は1970年代の少女漫画における心情描写の効果や背景、そして劇画などでも使われていた。水木しげる先生の作品では、特に背景には点描が多用されており、線で描かれた絵にはない空気感を感じることができる。

「列車よいとこの巻」(ジャンプ・コミックス第58巻収録)より
「列車よいとこの巻」(ジャンプ・コミックス第58巻収録)より

それでは次のページから、両さんが現代美術界に華麗なデビューを飾る(!?)お話をお楽しみください!!