鳥丸容疑者の前職は大手通信会社の営業職、芸能界については“素人

今回の被害女性は、「わいせつな行為をされ、つらかった」と訴えているが、そもそもなぜ地下アイドルや地底アイドルたちの事務所で今回のようなわいせつ事件が起こりやすいのか。

レイ法律事務所に所属し、芸能分野の刑事事件を多数扱う弁護士の河西邦剛氏は言う。

「まず芸能プロダクションには設立するのに資格も免許も設備も不要ですから初期費用がかかりません。極端な話ですが、HPや名刺を作って『芸能プロダクションです』と名乗ればその日からなれる。

また、タレントには『売れる』明確な基準がない。運営や制作側のイメージに合うかどうかという非常に曖昧な感覚や好みにより選別が左右されたりするため公平性もありません。そのため男性はもちろん女性も性的に搾取されやすい構図にあります」

鳥丸寛士容疑者
鳥丸寛士容疑者

実際に鳥丸容疑者の前職は大手通信会社の営業職で、芸能界については“素人”だったと思われる。

河西弁護士によれば「今回のような芸能プロダクションに所属するアイドルまたはアイドル志望の未成年女性や成人女性の性的トラブルは、年間10件ものご相談を受ける」ようだ。

「昨今、大手芸能プロダクションはコンプライアンスが厳しくなっている反面、無名事務所は外部からの目も行き届かないところがあるため、運営側に悪用されやすい一面があります。まさに今回の事件は氷山の一角に過ぎない。

先ほど説明した初期費用がかからない点も悪意を持ってプロダクションを創設しやすい理由のひとつです。今回のような事件を起こす芸能プロダクションのわりと多いのが事務所スペースを持たない『バーチャルオフィス』というケースです。

法人登記のために必要な住所や電話番号、郵便物の受とりと転送サービスが受けられ、月額1万円以下とオフィスを持つよりかなり低コストで始められるからです」

「GO little by little」のHPに記された事務所も、住所はバーチャルオフィスプランも兼ね備えたレンタルオフィスだった。

「GO little by little」があるレンタルオフィスのチラシ(写真/集英社オンライン)
「GO little by little」があるレンタルオフィスのチラシ(写真/集英社オンライン)

レンタルオフィスの受付の担当者に話を聞いた。

「こちらでは現在、こちらのオフィスにいるかいないかだけでそれ以上のことはお答えできません。こちらのオフィスには300社近く登録されているので、住所が利用でき、郵便物を受け取れるバーチャルオフィスプランの会社さんが最も多いですね」

HPに書かれた事務所のビル名は、実際のビル名とは違う名前が記されていた。しかしそのレンタルオフィスのネームプレートには、確かに「GO little by little」のプレートが存在した。