アパレルブランド経営者「昔から上から目線だった」
もともと、ルミネはJR東日本のターミナル駅のビルという超一等地の圧倒的な集客力を武器に有力テナントを集めるという手法で事業を拡大してきた。
前述のアパレルブランド経営者は「昔から上から目線の印象はあった。『俺たちが出店するテナントを選んでやる』という態度を感じることも」と振り返る。それでも、テナント側からすればJR東の圧倒的な集客力がある以上、頭を下げてでも契約したいというのが実情だった。
しかし、ニュウマン高輪に関しては前提が異なる。2024年度の高輪ゲートウェイ駅の一日平均乗車人数は1万4000人程度で、山手線の駅では最少。JR東日本管内では土浦駅(茨城県土浦市)や籠原駅(埼玉県熊谷市)と同水準だ。
オフィスやニュウマンの開業で乗降人数を1日13万人まで増やすとしているが、1日に200万人以上が利用する新宿や横浜とは比べるべくもない。ルミネの得意とする、圧倒的な集客力という武器は封じられており、「わざわざ訪れる人」を獲得する必要がある。
「意識高い系」の店舗を並べたことが吉と出るか凶と出るか
開業直後は訪れる人も多いだろうが、大型の商業施設があちこちにある東京において、物珍しさが一巡した後にどうなるかは心もとない。
ルミネとしては前述のように新規性のあるテナントを集めたことで集客につなげたい狙いだが、「意識高い系」の店舗を並べたことが吉と出るか凶と出るか――。
来場者の感想には濃淡がある。ハイブランドの化粧品や小物を扱う店の紙袋を手にしたインバウンドが大股で闊歩する一方、開業日にベビーカーを押していた30代の女性は「普段使いできる店が少ない」とこぼす。
豊洲のららぽーとのように、ユニクロやアカチャンホンポといった子育てに便利なテナントは入っておらず、大手チェーン店の食事が安価に楽しめるフードコートもないためだ。
現状、物販が中心で、六本木ヒルズのように映画館があるわけでもない。今冬には植物由来の食事を楽しめるプラントベースのレストランやワークスペースなどを備えた「都市型サウナ」が営業を開始する予定だが、これも万人受けする施設とは言い難い。女性は「一度来れば十分かな」と語る。