大スターが生まれづらい時代に反して成長する“推し活”消費

Zoffのサングラスの購入を支えているのは、どうやら“推し活”消費と考えて間違いなさそうだ。

メガネ業界の売上高ランキングで上位のZoff(撮影/集英社オンライン編集部)
メガネ業界の売上高ランキングで上位のZoff(撮影/集英社オンライン編集部)

SNSで目黒蓮の写真とともにサングラス購入の報告をしているのは女性が中心だ。Zoffのサングラスはシンプルなデザインと手ごろな価格、調光や偏光などの機能性も高いために男性の購入層に厚みがあった印象がある。そのターゲット層を女性へとスライドしたことで、売上が急増したのだろう。

推し活はいまや消費活動の最前線とも言えるものだ。マーケティングを手がけるCDGの推し活総研は、2024年の市場規模を3.5兆円と試算している。これは日本の医療機器市場に匹敵する大きさだ。

かつてアイドルや人気タレントは若者文化そのものを形成する力があった。その筆頭とも言える存在が木村拓哉だ。テレビドラマ『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』で彼が乗っていたヤマハのオートバイTW200は異例のヒットモデルとなった。木村拓哉を象徴するアメカジスタイルで、TWに乗るのが当時の若者文化として定着していた。

しかし、テレビや雑誌の影響力が低下した今、一人のタレントが若者すべてを巻き込んで熱狂させるのは不可能に近い。一方で、トレンドとなったのが一部のコアファンによる推し活である。“推し”に対するコアファン一人当たりの出費をいかに大きくするかがポイントなのだ。

博報堂は「リーチ力・支出喚起力ランキング」で、コンテンツビジネスの消費動向を調査している。それによると、「タレント・人物」の2025年におけるコンテンツ支出層の人数は2019年比で13%減少しているが、コンテンツの支出額は調査以来過去最高の8万5000円を超えた。2024年比で6034円増加したという。

サンリオの辻朋邦社長は日本経済新聞のインタビューで、“推し活”消費に対して「昔は家計の余剰のところで消費をしている感じでしたが、エンタメ消費という枠が生まれ、消費者が使えるお金全体のなかで比率が高まってきたと思います」と語っている(「推し活の消費は予算が別枠」 サンリオの辻朋邦社長に景気を聞く」)。消費者は推し活予算を確保しているというわけだ。

この“推し活”消費の盛り上がりもさることながら、目黒蓮の活動地盤に変化があった点も見逃せない。