絶妙なタイミングでZoffのアンバサダーに就任
Zoffは経営戦略も巧みな会社だ。これまでにサングラスにおける新たな市場を開拓している。
矢野経済研究所によれば、2023年のメガネ市場は0.1%の増加であり、高止まりが予想されていた。一方、サングラスは8.2%もの増加だ。コロナの収束で外出する機会が増えたことに加え、温暖化が進む近年の強い日差しの影響でUV対策としてのサングラス需要が旺盛になったのだ。
サングラスはレイバンやトムフォード、グッチ、オークリーといった海外のハイブランドと、雑貨店などで販売されている低価格商品の二極化が進んでいた。ところが、Zoffは5000円から1万円程度の中価格帯のサングラスを主力商品にしたのだ。
その戦略が当たり、2024年12月期の全店売上は16.6%の増加だった。今期は好調だった前期の揺り戻しを受けてもおかしくないタイミングだったといえる。実際、日差しが強い行楽シーズンの5月の全店売上は7.7%の増加に留まった。4月に3店舗の新規出店をしていたにもかかわらずだ。
しかし、目黒蓮をアンバサダーに起用した途端、全点売上で一気に29.4%も伸びたのだ。さらに、新規出店をしていない8月は22.8%増である。
Zoffが目黒蓮を起用したタイミングは絶妙だった。彼のCM好感度が急上昇していたのだ。
2024年からCM出演しているキリンビールの「晴れ風」は、発売から1カ月で同社の過去15年のビール類新商品最大の売上を達成するヒットとなった。これはビールを購入する人の3分の1が「晴れ風」を購入した計算になるという。
エム・データによる2024年TV-CMタレントランキングでは、20位以内に目黒蓮の名前はない。しかし、2025年上半期のCM総合研究所による好感度ランキングでは、3位に浮上しているのだ。「晴れ風」効果に加え、王子ネピア「ネピアティッシュ」、キッコーマン「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」などのCMに次々と出演し、好感度を高めたわけだ。