首相擁護派は「うちだけ恥をかく」と押され気味
防戦に徹する石破首相は両院議員総会で「地位に恋々とするものではない。しがみつくつもりも全くない」「しかるべき時にきちんとした決断をする」と、いずれ退陣を決断する可能性を示唆した。
だがいっぽうで、記者団の取材には「国民がやってほしいことに全力を尽くす」と続投への意欲も変わらず強調した。
「いずれ退陣する意向をにじませることで『なんとか前倒し総裁選は勘弁してくれ』というお願いでは。実際に『しかるべき時に決断』発言を受けて、『いずれ退陣するつもりなら、急いで石破首相を引きずりおろさなくてもいい』という考えに傾いた議員もいる。
石破首相にとっては前倒し総裁選さえ回避できれば、国民には一定程度続投を容認されながらも退陣した、ということでなんとか体裁が保てる可能性も出てくる」(自民関係者)
ただ、そんな思惑とは裏腹に、続投に意欲をみせる石破首相への反発もみられる。
「参院選直後の『米国との関税交渉の合意までは続けたい』という思いは、国益のためにも理解できたが、その後も賃上げや防災のような長期的な課題に取り組むことを明言し、しばらく辞めるつもりがないことが分かった。総裁選前倒しのタイミングで辞めてもらうしかないだろう」(自民議員)
こうした流れにあらがう石破擁護派。47都道府県連のなかでいち早く総裁選前倒しを求めないことを明言していた岐阜県連の関係者は、石破首相の続投を容認する勢力が少数派となりつつあることに「政治的混乱を招いてはいけないと、前倒しの総裁選は必要ないと言ってきたが、うちだけ恥をかくことになってしまいそうだ」と、石破おろしの勢いに押され気味だ。
「何をしてくるか分からない」 解散総選挙の憶測も流れ、疑心暗鬼の党内
こうしたなか、前倒し派、石破擁護派双方ともに警戒しているのが、政権運営に行き詰まった石破首相による「ヤケクソ解散」だ。
党内からは「退陣を迫られるなか、頼みの綱は自身の続投を容認する世論だけ。意固地になってヤケクソで解散することだけはやめてほしい」と警戒する声が漏れる。
というのも、石破首相は先月、郵政解散をした小泉純一郎元首相とも会談し、党内からは「自分の意に反した総裁選前倒しが行なわれることになったら解散する、との脅しでは」との推測も出ているからだ。
「今の石破政権にさすがに解散するほどの体力はないだろう」との見方も出るいっぽう、「衆院選と参院選で負けても退陣しない首相だから、何をしてくるか分からない」と疑心暗鬼の声も漏れている。
「しかるべき時」に決断し、自ら首相の座を降りるのか。史上初の総裁リコールを受けてしまうのか。それとも、解散という大勝負に出るのか……。8日に向け、続投にこだわる首相と、石破おろしに向け多数派工作に動く議員らとの攻防は続く。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班