12万超えのいいねに「田中さんって何者なの?」の声続出

8月20日、Xにて‘‘高知かわうそ市場‘‘というアカウントがポストしたのが、高知県柏島地域で「津波避難場所」として看板が設置されている“田中さんの畑”である。

こちらの投稿は12万件を超えるいいね、約1万件のリポストという盛り上がりを見せている。避難場所というと学校や体育館などがイメージされるが、田中さんの畑とはどんな場所なのか。当該ポストを行なった高知かわうそ市場の担当者に話を聞いた。

「私たちは高知県の魅力について発信を行なっているのですが、特にこのポストはたくさんの反応をいただきましたから、我々としても驚いています。リプライでは『田中さんがいい人すぎる』『住人のために土地を提供してくれる田中さんって何者なのか』などの反応がありました。県外はもちろんですが、県内でよく我々のポストに反応をくださる方々も、『初めて知った』という方が大半を占めていましたよ」

高知県柏島地域(写真/高知かわうそ市場)
高知県柏島地域(写真/高知かわうそ市場)
すべての画像を見る

敷地を提供している田中さんを称賛する声が相次ぐ中、私有地が避難場所として利用されることについて、リプライの欄では以下のような疑問の声も見られた。

<避難所って学校とか体育館、グラウンドなど行政が管理する施設が使われているイメージだったけど、私有地が該当する場合もあるのか>

<わざわざここを設定しなくてはならない理由があるのだろうか>

<どういった経緯で畑を避難場所に制定することになったのか>

これらの疑問を、田中さんの畑が位置する柏島地域の一帯を統括する大月町町役場の総務課の担当者にぶつけてみた。

「我々は田中さんの畑を“指定緊急避難場所”として使わせていただいています。“指定避難所”ではありません。その二つを同様のイメージでとらえられているような方もいらっしゃるようですが、実はそれは違います」

(写真/高知かわうそ市場)
(写真/高知かわうそ市場)

国土地理院のウェブサイトによると、指定緊急避難場所とは「災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所」「土砂災害、洪水、津波、地震等の災害種別ごとに指定が行われる」とされている。

いっぽう、指定避難所とは「災害が発生した場合に避難をしてきた被災者が一定期間生活するための施設」「災害種別に限らず指定が行われる」とされている。

“田中さんの畑”は、「津波の災害における指定緊急避難場所」として使われているのだという。

国土地理院のWEBサイトより
国土地理院のWEBサイトより

担当者は制定の経緯を以下のように続ける。

「平成13年に柏島地域を含む大月町全体で指定緊急避難場所について新たに登録を行う手続きが行われました。田中さんの畑を使わせていただくようになったのはこのころからです。

柏島地域は海に囲まれた土地ですから、津波の被害を想定した際に住民の皆様の命を守ることができる場所を避難場所にする必要がありました。そこで、当時の担当者が土地の所有者であった田中さんご本人と協議を行って、それ以来使わせていただいております」

畑のある場所の立地条件も非常に避難場所として適していたという。

「畑の位置する場所は海岸から約200メートルの場所で、海抜は19メートルあります。周辺地域は海に囲まれていることはもちろん、木々も生い茂っている場所が多いです。そのような地域で、高い場所かつ整地されている場所という条件が整っていたのが“田中さんの畑”だったというわけです」