「気のいいおじいちゃんでした」
近隣に住む30代の男性は“田中さんの畑”について、「周辺地域における認知率は100%ですよ」と話す。
「このあたりでは避難訓練で使ったこともありますし。人が多い地域というわけではないので、大体誰がどこに住んでるとかも知っています。ですから、ここら辺に住む人たちは“田中さんの畑”と言われたらほとんど100%の人が『ああ、あそこか』ってなるはずですよ。なので『津波が来たら田中さんの畑に』という認識が広まっているはずです。
ネットでこれだけ話題になっていますけど、私としては昔からある場所で、以前から指定緊急避難場所とされていた土地ですから、ここまで話題になっていることに驚いています」
近隣に住む40代の女性が、田中さんご本人について過去の記憶をたどってくれた。
「畑の持ち主である田中さんのことは知っていますよ。畑は少し高い場所にあるのですが、そこへ続く道の途中に田中さんのお宅がありました。今はだれも住んでいないようですけどね。
私が小さいころに田中さんの家に遊びに行ったことがあります。家に上がる時も歓迎してくれて、気のいいおじいちゃんでした。ですが数年前にすでに亡くなられていたようです。ご家族も近隣には住んでいらっしゃらないですよ」
登記簿情報によると、田中さんは約4年前に亡くなっており、畑は遠方で暮らす親族に相続されていた。
前出の役場担当者は「ご親族の御好意で指定緊急避難先として今も使わせていただいてます」と話す。海に囲まれた柏島の住民たちは皆、“田中家”に感謝していた。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班