予報官泣かせの線状降水帯
この線状降水帯は予報官泣かせです。前もって発生を予測することが難しいのです。気象の予測は、気象衛星などの最新の観測システムやスーパーコンピューターを駆使して行われていて、年々精度が上がってきています。ところが、この線状降水帯の予測はまだまだ難しいと言わざるを得ません。
理由はいろいろありますが、そもそも、なぜ積乱雲があのように線状に連なって次々に発生するのかがよくわかっていません。
たとえば、よく天気図に現れる低気圧や台風などは、ある程度、発生や発達のメカニズムがわかっています。なぜ台風が発達するのか、低気圧が発達するときとしないときで何が違うのか、気象学の教科書にしっかり説明が書かれています。
ところが、線状降水帯については、なぜ線状になるのか、できるときとできないときとで何が違うのか、そうしたメカニズムが十分わかっているとはいえません。最近、どのような状況のときに線状降水帯が発生しやすいかということについては、研究が進んできました。
大気が不安定であることに加えて、水蒸気が大量に流れこんでくることや上空の風に一定の特徴が見られることなど、発生しやすい条件がわかってきたのです。
ところが、そのような条件のもとでも、実際に線状降水帯が発生するかどうかを予測するのは難しく、2020年に球磨川を氾濫させた豪雨のときも、大雨になることは予測できましたが、線状降水帯が発生し、あのような記録的な豪雨になることは予測できませんでした。