土日の労働は時給換算で最低賃金を下回る
長野県長野市の高校に勤務する国語教師Cさん(仮名)は、過労で体を壊し、何度も自死を考えたという。
「土日は朝から晩まで大会に帯同。平日は授業準備と保護者対応で深夜まで。タイムカードが導入されましたが、“80時間超え”と記録されても部活を減らすことはできない。体が壊れていくのが分かりました」
部活動手当は3時間で2700円、休日の大会で8時間以上働いてもわずか5000円と時給換算で最低賃金を下回る。
「生徒と汗を流し、審判を探し、試合調整をしても、手元に残るのは小遣い程度。『なんで僕はこんなにも命を削っているんだろう』と何度も思いました」
Cさんの家庭にも影響は及んだ。
「妻には『また部活?』と呆れられ、子どもと過ごす時間もほとんどありませんでした。家庭の空気は冷え切り、自分自身も逃げ場を失い、精神疾患を患って休職を余儀なくされました」
文部科学省は2018年以降、教員の長時間労働是正を目的に部活動の地域移行を進めており、2019年1月には「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を策定。その後、2021年4月からは1年単位の変形労働時間制も導入されている。
こうした取り組みにより、長野市の中学校では一定の進展が見られるようになったとCさんは話す。
一方で、高校の現場は依然として厳しい状況が続く。
「中学では、平日17時から19時は地域クラブで活動し、土日も外部指導者が担当するなど、教員が関与しなくても回る仕組みができつつあります。でも高校は大会制度が変わらない限り移行できず、結局は顧問がいなければ成り立たない構造が残り続けているんです」(Cさん)
背景には、高体連が地域クラブの高校総体参加を認めていないという制度上の壁がある。中学は全中大会に地域クラブの参加が許可されて移行が進んだが、高校では同様の仕組みが整わず、顧問不在では大会に出場できない。結果として、教員の長時間労働を減らす制度改革は足踏み状態のままだ。
神奈川県の公立高校に勤める30代の女性教員Dさん(仮名)は、こう打ち明ける。
「部活が原因による家庭不和から離婚や別居に至る教師も少なくありません。実際に同僚の一人は、土日もほとんど家にいない生活が続き、奥さんから『家庭を顧みないなら一緒に暮らせない』と告げられて離婚しました。私自身も心身をすり減らし、休職を考えたことがあります。特に強豪校や伝統校ではプレッシャーが強く、若手や専門外の先生に過重な負担が集中しているのが現実です」(Dさん)
SNSにあふれる妻たちの孤独と、過労で追い込まれる教師の苦しみの声。この先、改革は進むのか、それとも「夫不在」と「教員過労」が続くのか……。現場からの叫びは制度が限界であることを突きつけている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班