「家庭内で話し合うきっかけ作りになれば」

この条例報道を受け、X(旧Twitter)では「愛知県豊明市」「条例案提出」などがトレンド入りし「今さら感がある」「子供には良い条例だと思うけど」「他に決めることないのかよ?」「スマホは1日2時間って“高橋名人”かよ」などと賛否両論が巻き起こった。

愛知県豊明市生涯学習課の担当者は今回の条例案が出た経緯についてこう説明した。

「市役所内で介護や子育て、生活困窮といった分野別の相談体制では解決に結びつかない暮らしの困りごとの相談窓口となる『重層支援センター』を7月から運営しております。

その窓口に不登校や生活困窮など福祉の狭間にいる人々からの相談で、スマホやタブレットに関する事例が数件ありました。その事例を見た小浮正典市長が提案し、何回か議会を行なう中でこの議案があがりました」

豊明駅(PhotoAC)
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担当者としても、発表以降の思いもよらない反響に戸惑いながらもこう解説した。

「子どもだけでなく市民全体としたのは、健康と睡眠への悪影響に関する注意喚起のためです。また、あくまで理念条例であり2時間という数字も、厚生労働省が示す睡眠時間のガイドラインなどを参考にし、使用時間の目安として盛り込みました。

また、その2時間という数字の根拠も日本人の生活リズムの中における1日の『余暇時間』が2時間であることから、それ以上の時間をスマホに使うと健康や睡眠に影響が出る場合があるというものです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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担当者は、「教育機関などでスマホ・タブレットを使う時間や、家族・友達同士で楽しむゲーム、仕事などでの使用は該当行為に含まない」としながらも、最も伝えたいことは2時間という数字ではない、と言う。

「スマホとの向き合い方や使う時間を、家庭内で話し合うきっかけ作りになれば、ということが大きいです。子どもが(スマホなどを)使い放題では学習や健康面でも影響が出ますし、それは大人においても同じことです。

この条例発表をしてから『よく出してくれた』というご意見もあれば『家庭の領域にどこまで踏み込むつもりだ』など様々なご意見をうかがっております」

豊明市内の小学校の男性教諭は、「このニュースを見て呆れた」と苦笑する。

「正直、行政が口出すことではないと感じました。親御さんからもスマホのトラブルは耳にします。しかし、タブレットはともかくスマホは学校ではなく家庭で与えられているものなので入り込めないのが現状です。

一律の指導はできないですし。使用ルールもない状態で『ルールをしっかり約束しましょう』と言っても、いまさら遅いですよね。

ここまで普及している以上は市の単位で言ってもどうにもなりません。ただ、家庭内でスマホを与えるときに詳細なルール作りをすることは大事でしょうね」

また、豊明市内の学習塾講師は「時代錯誤だ」と言う。

「学校も塾も教材などを配信し、それを通じての学習が増えていますから、とても現実的ではないと思いますよ。進学校を目指す子などは余暇時間を勉強に充てているわけですから。

生徒たちの親御さんらは家庭内でそれぞれルールを設けています。アプリごとに制限時間を設けたり。それを行政が条例化し、でも強制力があるわけでもないとなれば、条例化になんの意味があるのか疑問です」

写真はイメージです(PhotoAC)
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