キャリアを拓け、自分でね
で、何で終わったのか。神谷氏の定義に従うと終身雇用は「傾向」なので、ある日を境に突然変わったわけではない。象徴とされるのが早期退職制度で、2001年に松下電器(当時)の労働組合が受容したことを終身雇用の終焉の始まりとみなす向きもある。
早期退職は意訳すれば「かなり譲歩した解雇」であり、給料払うの難しいんで退職金払うからいま辞めてほしいという「企業側の」施策である。
50代にもなれば、貯金あるしあくせく働くより辞めようと考える方がいてもおかしくない。相応の退職金が支払われる場合もあるので必ずしも一方的な首切りではない。
ただ早期退職は決定的な信頼の毀損になりうる。ずっと一緒にいようねって言ってたのに突然「まあ場合によっては…別れてほしいかも」って言われたわけであるから。
他にも役職定年といった、役職ごとに定年を設けその年齢に達したら自動的に役職を退く制度もある。若手社員に役職を回すねらいもあるが、役職を降りて給料が大幅に減額されることも珍しくなく、これまた終身雇用の諸前提を覆すものであろう。
ここで重要なのは、会社と社員の信頼関係を砕いたのは企業側だという事実である。損してでも会社を辞めると社員側が言い出したのではない。関係を維持できなくなった企業側が条件を悪化させたから関係を保てなくなってしまったのだ。もちろん企業側は「いやいや、社員のせいでダメになったんじゃないか」と言いたいかもしれない。どっちにしても信頼関係は崩壊している。
「終身雇用みたいな古臭い制度の時代じゃないんです」とか宣うのはわりと意味不明で、終身雇用は会社と社員の関係を規定するひとつの仕組みであり、概ねは会社側が「契約破棄」したのだ。別れようって言われたから別れたのに、「アイツが別れるって言うから…」とか言いふらされてるみたいだ(違う?)。
過去をやたらと貶め新しいものを崇拝する言説には要注意である。いま崇めてるものを数年後には「もう古い」と言い出すに違いないのだ。













