インスタを主戦場に築古物件を買わせるインフルエンサー
しかし、付き合っていた彼女との結婚により、男性の港区ライフは急展開を見せる。1DKでは手狭だということで売却を試みたものの、どの不動産仲介業者も「これだけ古いと売れないと思いますよ」と、渋い対応だったという。
それもそのはず、1981年の耐震基準改正以前に計画された物件は不動産業界では「旧耐震」と呼ばれ、以後に建てられた「新耐震」に比べて地震での倒壊リスクが大幅に高まる。命にかかわるため、価値が大幅に下がり、売れづらいのだ。
実際、不動産ポータルサイトに掲載しても反響はほとんどなく、仲介業者に言われるがままに値下げを繰り返すことに。結局、数百万円かけてリノベしたにもかかわらず、購入価格を大幅に下回る価格で「損切り」せざるを得なかったという。
「港区にこだわらず、同じ値段で新しい物件を買っていれば全然違ったのに…」と悔やむが、後の祭りだ。
足元で問題になっているのが、住宅購入を焦る若者を煽って築古物件を買わせるインフルエンサーの存在だ。
「あまりにも行儀が悪すぎると、業界内でも噂になっている」
インスタグラムを主戦場に、「賃貸は金の無駄」「若いうちに家を買え」「立地が良ければ資産性は大丈夫」といった威勢の良い言葉を飛ばし、興味を持った若者に物件購入を勧めて手数料を得るというビジネスモデルだ。
「あまりにも行儀が悪すぎると、業界内でも噂になっている」
大手不動産デベロッパー系列の不動産仲介会社の港区の支店で働く男性はこう顔をしかめる。問題になっているのが、インスタで集客した若者を言葉巧みに操り、LINEのオープンチャットという「狩り場」に誘導する手法だ。
LINEのオープンチャットは誰でも参加できるが、インスタやX(旧Twitter)といったSNSと異なり、公開されている訳ではない。管理人側はパスワードなどを使ってメンバーを管理できる上、意に沿わぬ発言をした参加者を「追放」することも可能だ。前述のインフルエンサーのオープンチャットには、数千人のメンバーが参加していた。