試作と味比べ、人気投票で決まった「15gの正解」
ローゼルの酸味と鮮やかな色に手応えを感じた伊藤さんは、クラフトコーラの試作に取りかかった。収穫したローゼルのがく(花の最も外側にある、花びらを包む部分)を使い、スパイスやレモン、砂糖などを加えた液体を煮詰め、何パターンかの配合で味と色を確認するという作業を繰り返した。
がくの量を変えて試作した結果、水分100mlにがく15gを使用したレシピが試飲では最も評価が高く、「風味がはっきりしていて飲みやすい」といった声が集まった。見た目にも深紅が印象的で、爽やかな酸味とほどよいスパイスの香りが調和した、大人っぽい味わいのコーラが完成した。
「もっとたくさんの人に飲んでほしい」クラファンという出口
伊藤さんの挑戦は、完成したレモン&ローゼルクラフトコーラを「もっとたくさんの人に飲んでもらいたい」という願いとともに、新たなステージへと進むことになった。
家族や地元の大人たちの協力のもと、クラウドファンディングでのプロジェクトが立ち上がる。
プロジェクトページには、開発のきっかけや伊藤さんの思い、制作の様子などが写真付きで丁寧に紹介されている。支援者にはクラフトコーラが届くほか、コーラづくりをまとめた、伊藤さん手書きのコーラ新聞などがプレゼントされるプランもある。
自由研究がここまで展開するとは、親子ともども想像していなかったと、伊藤さんの母親は振り返る。「日々の暮らしの中で、子どもが出す『なぜ?』『どうして?』って、意外とささいで見逃してしまうことが多いと思うんです。私もコーラが作れるなんて、娘と自由研究をやって初めて知りました」
「自由研究ってとても大変というイメージがあるけれど、どんなささいなテーマでも、子どもの『なんだろう?』を大切にすれば面白い研究になるし、広がっていくんだなと思いました。こんなに大きくなるとは思わなかったですけど(笑)。今回のことで難しいなと感じたのは、親が手伝いすぎないこと。親から見たら、それでは失敗するんじゃないかしら……と思っていても、やってみたら意外とうまくいったこともありました。親の私も学ぶことが多いなと思います」
伊藤さんは日々の疑問をノートにメモして、塾の先生や家族に質問しながら、次の自由研究の題材を探しているという。
「ささいな疑問ってやっぱりささいで、どうしても忘れてしまいがち。ノートを見返し、『なぜ』を見つめなおすことで、新たに『なぜ』が生まれることもあるみたいです」
子どもの小さな疑問に寄り添うことが、思いがけない学びや成長、そして地域との新たなつながりを生み出すこともある。自由研究とは本来、そうした気づきのきっかけとなる営みなのかもしれない。
この夏、親子で「なぜ?」を探す時間を持ってみてはいかがだろうか。
取材・文/塩谷奈津