電気料金の高騰で6割の世帯がエアコンの使用を控える意向 

さらに電気代の高騰ぶりも凄まじい。政府の補助が終了した2025年5月の一般的な家庭の電気代は1万2220円で、前年同月比で11.0%増加した。政府は7月から9月までの3か月間にわたって再び電気・ガス料金の補助を行なうことを決めた。これによって月1000円程度の負担減につながる。

しかし、インフレが進行する前の2021年5月の一般家庭の電気代は9644円であり、現在は2500円以上高くなった。一部の年金受給者や非課税世帯が、この補助で酷暑を乗り切れるのかは不透明だ。ダイキンの「電気代値上げとエアコンの節電に関する意識調査」によると、電気代の高騰で6割以上の人がエアコンの使用を控えようと思っていると回答している。

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このような過度な節約志向は命の危険さえ伴う。7月21日から27日までで、熱中症で救急搬送された人は昨年に引き続いて1万人を上回った。全体の2.5%が死亡または重症者だ。そして熱中症の4割は住居で発生している。その割合は道路や仕事場、公衆(屋外)などと比べて圧倒的に高い。

東京都監察医務院は、熱中症の屋内発生例の16%がエアコンを適切に使いこなせていなかったために死亡したとの分析結果を発表している。適切に使えていなかった8割は高齢者世帯で、生活支援や年金受給者、預貯金生活者が大半だったという。

政府は電気代の補助で国民を守っているが、累計で4兆円もの予算が計上されている。いつまでも続けられるものではない。

電力会社と政府は安価な電源開発に本腰を入れている。原発の新増設だ。関西電力は福井県の美浜原子力発電所の施設内で、次世代型の原子炉建て替えに向けた調査を開始すると発表した。新増設は2011年の原発事故以降、初だ。

中長期的に電気代が下がることにも期待ができるが、経済産業省は原発の建設費が増えた分を電気料金に上乗せして回収する支援策をまとめている。建設費が高騰している今の状況を考慮すると、必ずしも負担減につながるものでもなさそうだ。