「腐ったリンゴ」が樽の中のリンゴを全部ダメにする

チームのメンバーは互いに協力し合い、ラジオでクラシック音楽を流し、仕事が終わると飲みに出かけるようになった。でも、彼がオフィスに戻ってくると、不穏な雰囲気に逆戻りした。

彼が病気になる以前は、妻は彼にそれほど影響力があることに気づかなかったが、欠勤しているあいだの職場の雰囲気を観察して、彼がかなりネガティブな影響を与えていると思うようになった。まさに樽の中のリンゴを全部だめにする「腐ったリンゴ」だった。

1人の人間がチーム全体に与える影響に興味を持ち、フェルプスは同僚のテレンス・ミッチェル教授(ビジネスおよび心理学)とともに、チームや従業員グループ内の相互作用に関する24の研究を綿密に調べた。

さらに独自の調査を行い、1人の「ネガティブ」なメンバー(仕事を公平に分担しない、同僚を攻撃する、精神的に不安定など)が、うまく機能するはずのチームをどれほど乱すのかを明らかにした。

そうしたケースは思いのほか一般的で、ほとんどの人にとって、少なくとも1人は職場の「腐ったリンゴ」に心当たりがあるとわかった。

また、とりわけネガティブな従業員が長く在籍し、経験豊富で、社内で権力を持っている場合、大部分の組織に効果的な対処法が備わっていないことも明らかになった。

ネガティブな行動は完全にポジティブな行動を上回っていた。つまり、1人の「腐ったリンゴ」はチームの文化を損なう可能性があり、優秀な従業員が1人、2人、あるいは3人いても元には戻せない。

「ファーガソン監督の最大の強みはスター選手を移籍させる能力だ」1人のネガティブな人材がチームをダメにしないよう、超一流のリーダーが最優先すべきもの_3

樽は洗える

結論としては、「腐ったリンゴ」が解雇されなければ、従業員の士気の低下、ほかの従業員による模倣、出社拒否、不安や恐怖につながる。その結果、チーム内の信頼関係が悪化し、メンバーのモチベーションがさらに下がる。

フェルプスとミッチェルが発見したのは、私自身がビジネスキャリアを通じて何度となく学んだことだった──良い会社は1人の従業員が辞めても潰れないが、1人が留まることで潰れる場合はある。

「腐ったリンゴが1つでもあると樽全体をダメにしてしまうかもしれない。でも、大事なのは樽は洗えると覚えておくこと。前向きな文化を保つためには、行動を起こして有害な人を追い出すことが大事」 オプラ・ウィンフリー(テレビ番組司会者・実業家)