住民の間では行政の対応への不満と不信感
相次ぐ被害と高まる危険性に対し、住民の間では行政の対応への不満と不信感が募っている。クマを目撃したと通報しても、行政はパトロールをするだけで、具体的な捕獲にはつながらない。
聞き取りに時間を取られるだけで無駄だと感じ、地域住民の多くは通報自体を諦めているという実態がある。
近年はトウモロコシ畑を荒らし、生ゴミをあさる姿が頻繁に目撃されるようになった。人を恐れなくなったクマが、ついに人を直接襲うようになった。行政は現実を直視し、猟友会が即時に対応できるような法整備を急ぐべきだろう。
行政の多くは、クマと出合わないことが最も重要だと呼びかけ、もし出合ってしまった場合は走らずにゆっくりと後ずさりして身を守ってほしいと注意を促す。このような対応は、切迫した現場の危機感とは温度差がある。
一部のメディアもまた、現実から乖離した論調を展開している。朝日新聞社の社説(7月23日)は、住民やハンターの安全確保を最優先にすべきだとしながらも、本質的な解決のためには人間と野生動物のすみわけに本腰を入れて取り組むべきだと主張する。
脅威に日々直面している住民の恐怖を理解していない朝日新聞
また、朝日新聞は市町村長の判断で駆除が可能になる緊急銃猟の導入に触れつつ、ヤブ刈りや餌となる果樹の撤去といった環境整備、専門知識を持つ人材の育成こそが急務であると説く。そして大局的な視点から、人口減少時代の国土全体のあり方の中で生態系の保全を考えていくべきだと締めくくっている。
こうした共存を前提とした理想論は、クマの牙や爪の脅威に日々直面している住民の恐怖を理解していない。
日本国内のクマ問題を正しく議論するためには、クマという動物が持つ捕食者としての本質を理解することが不可欠である。その理解を深める上で、海外で発生した事件は、日本の甘い認識を根本から覆す重要な教訓を与えてくれる。
ロシアから伝えられたニュースは、日本のクマ対策が必ず踏まえておかなければならない、冷徹な現実を我々に突きつける。