麻生氏が担ごうとするポスト石破は?

この発言が号砲となった形で、さっそく麻生氏の周辺からは「石破おろし」の動きが顕在化してきている。

一時は総裁候補にもなった河野太郎元外相は22日のテレビ朝日の番組で、「石破茂首相が関税交渉のために残るなら、幹事長が選挙の責任を負って辞表を出すのが筋だ」と発言した。

「志公会(麻生派)」の一員である河野氏の発言からは、石破政権の中枢である森山裕・自民党幹事長に揺さぶりをかけて政権の基盤を揺るがそうとする意図が透けて見える。

高市氏と近い山田宏参院議員、西田昌司参院議員からも石破首相の続投表明に反発する声が上がっている。

西田昌司氏(西田昌司事務所Xより)
西田昌司氏(西田昌司事務所Xより)

別の大手紙政治部記者は、「21日の会見では、続投するのか。続投するにはそれなりの説明があるのか。ここが焦点でした。ところが、会見の中身は具体性に欠け、かつ新味もなかった。衆院選、都議選、参院選と3連敗したことの意味がわかっていないのではとの批判が閣僚の中で相次いでいます」と打ち明ける。

今回の選挙では「皇室の男系継承」や「教育勅語の尊重」など、いわゆる「岩盤保守層」に響く政策を打ち出した参政党が躍進した。

党内で穏健派の印象が強い「宏池会」出身の岸田文雄氏、石破氏と二代にわたってリベラル色の強い政権が続いたことで、離れた自民支持層の一部を取り込んだことが参政党の伸長の一因になったとの指摘もある。

「麻生さんは、今回の選挙で参政党と国民民主に流れた、旧来の自民党支持層の票を回収できるのは、保守色が強い高市さんしかいないと見ているわけです。

自民党がリベラル化したのは今に始まった事ではないですが、麻生さんは高市さんなら流れた票を取り戻し、自民党を立て直せるのではと考えており、ポスト石破の候補として担ごうとする思惑があるようです」(前出の全国紙記者)

高市早苗氏(本人Xより)
高市早苗氏(本人Xより)

ただ、かつて「キングメーカー」として権勢をふるった麻生氏の影響力にも陰りは見える。高市氏を立てて勝負に出た前回の総裁選では、党内に一定の影響力がある菅義偉元首相や森山幹事長を味方につけた石破首相に押し切られた形で、石破政権発足後には、副総理のポストも奪われた。

しかも石破首相にリベンジを果たそうにも、今選挙の敗戦では、権力の源泉となる「派閥議員」を失っている。

「今回の参院選で、麻生派の顧問を務める山東昭子元参院議長が全国比例で落選した。山東氏は、かつて『番町政策研究所(山東派)』を率いていたが、麻生派に合流して党内での影響力拡大に貢献した1人でした。

ほかにも自身の強力な支援団体である日本医師会の支援を受け、自らの親族でもある武見敬三元厚労相も議席を手にすることができなかった。しばしば時の政権の舵取りに介入しようとする手法への批判もあり、かつてほどの求心力はないと言わざるを得ません」(大手紙政治部記者)

武見敬三氏の開票センターにて
武見敬三氏の開票センターにて
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実際、「ポスト石破」の議論も活発化していない。衆参で少数与党に陥った現在の状況では、政策審議でも野党との調整が必要になるなど、難しい政権運営を迫られることが必至だ。党内で、火中の栗を拾うような役目を引き受ける人材は見当たらないとの指摘もある。

「『石破さんでないとダメだ』という”石破全肯定”の人はほとんどいません。ただ、じゃあ、石破さんの代わりに誰がなるのかといった話になると、適当だと思う人がいないのが現実です。しばらくは石破さんで様子見するのが賢明では、との声が大勢を占めています」(同)

勢力図が激変し、混迷の度が深まる永田町。「石破辞めろ!」の声は、燎原の火のように燃え広がっていくのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班