これは「あなたたちのプロジェクトだ」

「なぜ農民たちは、こんなにも一生懸命農作業に励むんだろう」

それは援助構造の根源にある課題に触れていた。一般に援助屋がプロジェクトを提示すると、住民はよっぽどひどい内容でない限り、基本的に異論を申さない。少しでも自らの利益になるならば、それを歓迎し、援助屋の指示に従う。

それならば「お金をもらえるから参加する」や「時間になったら切り上げる」という農民の思考も理解できる。問題はとても単純で、援助提供者のアプローチ部分にある。

私たちはプロジェクト開始時から、これは「あなたたちのプロジェクトだ」と言い続けた。農地に来るのも来ないのもグループの自由。多大な自助努力を必要とする。それでも参加するなら私たちは毎日農場に来て技術研修を提供する。何度反発されても、そのようにして主体性の尊重を一貫してきたことが1つの成果をもたらしたと思う。

主体性を発揮する住民たち 写真/著者提供
主体性を発揮する住民たち 写真/著者提供

しかし、このスタンスでは、もともとある程度優秀で物わかりのよい住民や、特に関心が高い層だけがアクティブに参加する。

そして本当に支援が必要な─私たちが一番自立支援の対象であってほしいと願う世帯─はしばしば脱落してしまう。だからこそ、私たちはこれまで、出席率を落としてしまった支援対象者には個別訪問を厭わず、フォローアップを続けてきた。

そのような個別訪問を通して「この活動が本当の意味で、彼らのためになる」ということが伝われば、彼らはまた出席する。アパリンもそうだった。「日当なしにプロジェクトが成功することはない」と政治家は口酸っぱく私を説得した。大事なことだから繰り返すけれど、日当がないから成功しないのではなく、日当があるから成功しないのだ。

日当がなくても「これは私の畑なんだ」という意識さえあれば、主体的に農作業に励むのは至って普通のことだから。