英語幼稚園に年間300万円…日本語はほぼ理解せず 

SAPIXに通う中国人の子どもたちが日本社会に根を張り、ルールの中で競争を勝ち抜こうとするのに対し、一時的な避難先として日本を選んだ教育移民の意識は明確に異なる。あくまで日本は一時的な滞在先でしかないので、日本の教育システムに適応しようという意識はほとんどない。

それでは、彼らはどこへ向かうのか――。港区のプリスクール(英語で運営されている幼稚園)を訪ねると、その問いに対する答えがあった。園内で遊んでいる子どもたちの姿形こそ日本人と変わらないが、クラスの半数近くが中国人の子弟なのだ。

朝や夕方にはベンツやBMWなどの高級車がずらりと並び、中国語を話しながら子どもを送迎している中国人女性の姿を見かけた。

送り迎えに来る親たちは日本語をほとんど理解しないが、プリスクールの教員とは英語でコミュニケーションを取れるので、全く問題ないのだろう。年間300万円という学費も、富裕層にとっては端金だ。

英語教育熱の高まりを受け、東京都心部では現在、雨後の筍のごとくインターナショナルスクールが誕生している。伝統的なインター校は受け入れる生徒を厳選することで国籍が偏らないようにしているが、新興系の学校の多くはそんなことはお構いなしに中国人生徒を受け入れているため、休み時間ともなれば中国語が飛び交うような学校もあるという。

需要と供給が一致した結果といえばそれまでだが、彼らの最終目的地は欧米の大学だ。日本語も学ばず、日本の文化も学ぼうとはしない彼らにとって、日本はあくまで経由地でしかない。

「中国人富裕層向けに作られた学校」が岩手に…

こうした中国人の教育熱を逆手にとっているのが22年に岩手県に誕生した全寮制のハロウインターナショナルスクール安比ジャパンだ。

イギリスの名門パブリック・スクールであるハロウスクールの系列校として開設された同校の学費は寮費込で年間約1000万円。入学から卒業までの7年間で実に7000万円がかかる計算だ。

英国式の教育をアピールする同校だが土地を所有するのは中国資本の企業であり、国内のインターナショナルスクールに詳しい有識者は「中国人富裕層向けに作られた学校だ」と断言する。

ハロウインターナショナルスクール(HPより)
ハロウインターナショナルスクール(HPより)

国際的な環境を謳うものの、実際に通う生徒の多くは中国人だという。開校当時は日本人の富裕層の間で話題になったものの、現状が知られるにつれ、関心は薄れているという。もっとも、中国人富裕層にとっては、中国語も通じてのびのび育てられるということで、依然として人気だという。

中国人は同胞意識が強い一方で格差や地域差も大きく、一括りにまとめることは難しいとされる。SAPIXで日本人に交じってしのぎを削る中国人もいれば、日本は一時滞在先と割り切って中国人だらけの環境で日本語を一切覚えないまま出国していく中国人もいる。

最近では、日本の大学に入学するため、中国人がTOEICの試験会場で集団カンニングを行なったという事案も発覚した。彼らと今後どのように付き合っていくのかは、日本社会に突きつけられた大きな課題だ。

取材・文/築地コンフィデンシャル