中国人が日本のエリートコースを席巻
彼らの多くは東大や医学部で圧倒的な合格実績を持つ受験指導専門塾、「鉄緑会」の門戸を叩き、そして東大や医学部へと進学していく。就職でも、総合商社や外資系コンサルティング会社や投資銀行の新入社員で中国系の名字は珍しくない。
海外というアウェーという逆風をものともせず、日本社会の偏差値エリートが歩む王道コースを歩んでいるのだ。
中国人が日本のエリートコースを席巻――と聞くとおどろおどろしいが、彼らの親である中国人の多くは中国が貧しかった頃に留学生として来日し、日本で就職し、日本人に交じって働き、子どもを日本で育てている労働者階級だ。
教育熱心なのも、異国の地で我が子が不利にならないようにという親心であり、そこは日本人と変わらない。彼らの子どもたちは国籍こそ中国ではあるが、正規のルートを通って、日本人の子どもたちと同じ条件で競争し、そして勝ち残っているのだ。
日本はビザが取りやすく、子どもの教育も考えた一時的な避難先
家では中国語を使う家庭が多いものの、日本生まれで日本式の教育で育った子どもたちは日本社会に完全に同化しており、中には思春期を経て中国語を喋りたがらなくなる子もいるという。
「たとえ苗字が中国系でも、イントネーションからは日本人とまったく判別がつかない」と鉄緑会に通う高校生は話す。
中国人の両親を持ち、名門私立中高から東大に進学して起業した、とあるスタートアップ企業の社長は、「中国は親戚が住んでいる国というイメージで、自分にとっての母国は日本だ」と笑う。日本に複雑な感情は持つことはあるものの、いわゆる「反日」といった思想とは無縁だという。
一方、足元で新たな問題となりつつあるのが中国からの資産の退避先として日本を選ぶ中国人だ。中国経済の失速や習近平政権の強権的な統治、富裕層を狙い撃ちにした規制などを受け、国外逃亡を企てる中国人は増えている。
ウクライナ問題を抱える欧州やトランプ政権が誕生した米国との関係が悪化する一方、日本はビザが取りやすく、子どもの教育も考えた一時的な避難先として選ばれるようになっている。いわゆる教育移民だ。