自民党の政策とは、こうした不透明な利害調整と政治的妥協の産物 

対照的に、自民党の政策決定は、党の政務調査会傘下にある各部会で、特定の業界の利益を代弁する族議員と、関連省庁の官僚、そして業界団体の代表者が密室で利害を調整する旧来のプロセスに、今なお大きく依存している。

そこで最優先されるのは、国民全体の利益ではなく、特定の業界や組織の個別利益である。改革案に含まれる矛盾や対立点は、この調整過程で骨抜きにされ、抜本的な改革は常に先送りされる。一見、矛盾がないような自民党の政策とは、こうした不透明な利害調整と政治的妥協の産物に過ぎない。

自民党の陳腐化した体質は、自らの綱領が持つ極端な分かりにくさにも端的に表れている。日本国憲法の条文は分かりにくいと声高に批判しながら、自らの基本理念を示すはずの綱領は、それ以上に抽象的な言葉が並び、現代の国民に何を伝えたいのか全く理解できない。

国の根幹である社会保障制度も、すでに持続可能性を失っている。厚生労働省が5年ごとに行う公的年金の財政検証は、将来の年金給付水準が、現役世代の所得に対して着実に低下していく暗い未来を明確に示している。

マクロ経済スライドという難解な名前の仕組みは、高齢化の進展に合わせて年金の給付額の伸びを抑制する、実質的な給付カットに他ならない。制度そのものを破綻させないための延命措置である。

その負担は、将来世代、つまり現在の現役世代へと一方的に先送りされている。70歳、80歳になっても働き続けろと言われ、その一方で、若い頃に約束されたはずの社会保障は大幅に削減されているという未来が、多くの現役世代を待ち受けている。

参政党議員は、今後、国民からの厳しい批判と検証に絶えず晒される 

参政党「謎の新人」さや氏の街頭演説(写真/集英社オンライン)
参政党「謎の新人」さや氏の街頭演説(写真/集英社オンライン)
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自民党政権は、こうした社会の根本的な問題から目をそらし、小手先の対策でお茶を濁し、ごまかしを続けている。参政党の政策の是非を一つ一つ詳細に議論する前に、まず統治能力を失い、機能不全に陥った自民党政権をどうにかすることこそ、停滞する日本社会を前に進めるために必要不可欠である。

参政党から当選する議員は、今後、国民からの厳しい批判と検証に絶えず晒されるだろう。その批判に耐えられない未熟な政策は潔く変え、国民の支持を得られる政策はさらに磨き上げていけばよい。

変化に対応できる柔軟性こそ、既存政党にはない新しい政党の強みになり得る。

明確な国家ビジョンも、具体的な政策も、改革への意欲も失い、ただ現状を維持することだけに汲々とする自民党が政権の座に居座り続けるより、たとえ多くの矛盾や未熟さを抱えながらも、国民の声と真剣に向き合おうとする新しい勢力が議席を伸ばす方が、日本の未来にとって100倍マシであることは間違いない。

(文/小倉健一)