食料安全保障ではなく、自らの政治的利益の維持を優先

 日本の農業にも、本来は大きな可能性がある。一部の意欲あるイチゴ農家は、極めて高品質な果物を上海など海外の富裕層に向けて輸出し、大きな利益を上げている。

北海道のホタテ漁業協同組合は、中国政府による理不尽な禁輸措置という逆境を乗り越え、アメリカや東南アジアに新たな市場を開拓して成功を収めた。

農林水産省が公表する農林水産物・食品の輸出実績データは、和牛や日本酒、高品質な果物といった品目が、海外で高く評価され、輸出額を伸ばしている事実を示している。

これらの成功事例の多くは、政府の補助金に依存することなく、生産者自らの知恵と努力によって新たな市場を開拓した結果である。

政府・自民党が米だけを過剰に保護し続ける政策は、日本の農家が持つ本来の可能性を信じていない証左に他ならない。

補助金を手厚く与えておけば、自民党の重要な地方の支持基盤である農業協同組合(JA)から政治的な文句は出ない。自民党の農業政策は、日本の農業の未来や食料安全保障ではなく、自らの政治的利益を維持するためだけに存在している。

参政党の政策は確かにおかしい。でもトランプにも矛盾はある 

トランプ大統領
トランプ大統領

参政党が掲げる政策には、確かに論理的におかしい点や、非科学的と指摘されても仕方のない主張が散見される。アメリカのトランプ大統領が、不法移民の排斥を声高に叫びながら、自身の支持基盤でもある農業分野での移民労働力の活用を容認するように、一見して矛盾した政策を抱える政党は世界中に存在する。

イギリスで既存の二大政党を脅かすほど支持率を伸ばしているリフォームUKも、厳しい移民政策を公約の中心に掲げつつ、医療などを支えるエッセンシャルワーカーとしての外国人は受け入れるという、柔軟とも矛盾とも取れる姿勢を見せる。

既存政党が拾いきれなかった国民の多様な不満や日々の要求を真正面から吸い上げようとすれば、政策全体として多少の矛盾や非一貫性が生じるのは、ある意味で避けられないのかもしれない。

むしろ、何の明確な主張もなく、官僚が作成した当たり障りのない矛盾のない文書をただ読み上げるだけの自民党の政治家のほうが、国民にとっては不気味な存在ともいえる。

参政党は「DIY政党」を標榜し、一般の党員が政策立案に直接関与できる仕組みを導入している。少なくとも国民の声を直接政治に反映させようとするその姿勢は、評価されるべき点でだろう。