原作者自身のハラスメント経験も反映
――実際に、はやかわさん自身、ハラスメント被害に遭った経験はあるんですか。
腐るほどありますよ。漫画家なんて売れなかったらクソみたいな扱いされることも多かったですし、僕も編集者からひどいハラスメントを受けて目の病を患ったこともありましたね。
漫画家のアシスタントとしていろんな現場を掛け持ちしていた時は、漫画家同士で「あの先生はやばい…」「あの先生の下でひどい扱いを受けた」みたいな話で盛り上がることもありました。
昔、机を並べていた男の子が別の漫画家のところにヘルプで入って、数か月後には、完全にうつ病になって帰ってきたこともありました。本当に健全ないい子だったのに…。
――そうしたこれまでのハラスメント経験による想いを作中に投じた部分はありますか?
たくさんありますよ。1巻の第4話「パワハラの定義わかりますよね?」では、元サッカー選手の金久保が課長の仁原からパワハラを受ける話を描いてますが、これは僕がかつて編集者からされていたハラスメントをそのまま言語化したに近いです。
相手にできないようなタスクを押し付けて、思考力を空転させることはまさしく自分の被害経験から出たものです。あと、「すいません」と言ったことに対し、「“すいません”って言ってるけど、“すみません”だから!」の課長の台詞は、僕の大学時代の嫌いな先輩の発言をそのまま引用しました。
どうでもいい指摘をして「本当にお前はできないよな…」と評価を下してくる。今思えば「そこ重要?」ってことばかりだったので、だからこそ最後の犬神のやり返しを総括にしました。
――この漫画シリーズを通して伝えたいメッセージはありますか。
エンターテインメントなので、この漫画を読んで息抜きしつつ、「ひょっとしたら自分の周りにもあるかもな」って思っていただければありがたいですね。
取材・文/木下未希