置き配をすることで生まれる犯罪リスクとは
また、置き配がこれから標準化されることで、防犯の観点では新たなリスクも顕在化すると指摘するのは、防犯アドバイザーの京師美佳氏だ。
「まず、盗難被害(いわゆる“置き配泥棒”)や、荷物へのいたずらなどのリスクが高まります。玄関先に荷物が可視化された状態で放置されると、素人の泥棒でも持ち去ります。不景気の影響もあり、高額な商品だけでなく、水や食料品といった生活必需品も盗まれているのが実情です」(京師氏、以下同)
さらに、荷物が放置されていることで「この家は留守かもしれない」と空き巣に目をつけられる危険性もあるという。
京師氏が相談を受けたケースの中には、「配達から数分のうちに盗まれた」「液体をかけられた」といった被害もあったそうだ。配送完了後に荷物が盗まれた場合、配送業者と受取人の間で責任の所在が曖昧になり、トラブルが複雑化する傾向も見られる。
「ニセの配達員を装って侵入を試みた不審者の例もあります。集合住宅では、住民以外が入りやすく、防犯カメラのない物件では証拠が残らないため、被害の立証が困難です。
また『在宅中にインターホンを押さずに置き配されることで、不審者かどうかの判断ができない』といった声もあります。置き配を導入するなら、居住者のライフスタイルに応じた防犯対策と、業者側の意識改革の両立が不可欠です」
しかしこうした課題を抱えつつも、それでも置き配の標準化が求められる現実がある。
国土交通省によると、2023年度の宅配便取り扱い個数は50億733万個。前年度から約145万個増加。さらに2013年度の36億3668万個と比べると、10年で約1.4倍にも膨れ上がっている。
この増加に比例して、再配達の負担も膨らんでいる。現在、毎日およそ137万個が再配達されていると推計でき、非効率な配送体制が、人手不足をさらに深刻化させている。
これまでは「宅配=手渡し」が当たり前だった。しかしこれからは、その“当たり前”を見直さなければ、物流そのものが立ち行かなくなる可能性が高い。
今後は、「置き配を使うかどうか」ではなく、どうすれば、「安心して置き配できる社会をつくれるか」を考えていくことになっていくだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部