「なぜやめなかったのですか」と質問すると… 

――申し訳ないと思いながら、なぜやめなかったのですか。

江尻被告が怖かったからです。「これは仕事だから徹底的にやれ」と怒られたりして。殴ったりはされませんでしたが、言葉が強いのでこの人から逃げられないと思ってしまってた。それにどこかで「絶対に捕まらない」という言葉を信じて後先考えずにやってしまってたところもあります。

「ミッションノート」(撮影/集英社オンライン)
「ミッションノート」(撮影/集英社オンライン)

――いま被害女性たちに思うことはありますか。また、6月25日の結審に思うことは。

皆さんには本当に申し訳ないと思っています。できる限り皆さんに謝罪の手紙を書いています。裁判で何年求刑が出ようともそれを受け入れ、償おうと思います。

こちらの質問に対し、なるべく丁寧に答えようとする姿勢はみせていた武田被告。一方で筆者は江尻被告に関係者を通し取材を申し込んだものの断られてしまった。

被害女性らは、江尻被告にも面会しているというが、つい先日、江尻被告と面会した被害女性のひとりは面会室で江尻被告に怒鳴られたという。2022年2月に江尻被告とアプリで出会い、800万円を騙し取られた相田さん(仮名、47歳)は言う。

取材に応じる相田さん(撮影/集英社オンライン)
取材に応じる相田さん(撮影/集英社オンライン)
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「私は自分の貯金だけでなく親や友人、消費者金融などにもお金を借りて総額800万円を江尻に騙し取られました。江尻被告と面会した際に、出会った当時につかれた嘘について指摘したら『そんなことない!』『俺の話を聞けよ!』と怒鳴られました。面会に立ち会った刑務官のかたも驚いてましたが、なにより私が驚いて怖くて『怖い!』と言って面会室を飛び出してしまいました」

相田さんは「江尻被告には刑務所から一生出てこないでほしい」と願っている。

6月25日に行なわれた名古屋地裁の公判の際、江尻被告は「反省しています。借金は返せると思います」と被害女性に反省の弁を述べたが、「詐取した金」を「借金」だと言い張った。検察側は江尻被告に懲役8年、武田被告に懲役7年を求刑している。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班