FAも含めた移籍と保留制度の問題
MLBは制度として父休リストに入ると最長3日間の休暇を認めている。これは2011年に作られた制度だが、日本の選手会もまた今年5月に慶弔休暇制度をNPBに提案している。
昔のように「プロ野球選手は親の死に目にも会えないと思え」という時代ではなく、球団でも対応しているので、わざわざ制定する必要はないのではないかという声もあるが、會澤をこれをやんわりと否定する。
「理解のある球団は、それはいろいろやってくれてます。でも制度としてしっかりとあるというのが大事ではないかと思うんです。使うのか、使わないのかは、それこそ個人の自由でいいと考えています。
慶弔休暇があるから休まなくてはいけないというものでもない。これも選択肢をいっぱい増やしておきたいというのが僕の理想ですね」
ひとつ、會澤に聞いておきたいことがあった。FA権取得の短縮問題にからんだ保留制度交渉である。現行は1軍登録日数を145日で1年と換算し、高卒8年、大卒・社会人出身が7年、海外FA権は9年で取得する。選手会はこれを一律6年に短縮するように求めてきたが、交渉は進まなかった。
そこで選手会は、ここに至ってFA制度の修正ではなく、保留制度(球団は選手を保留名簿に載せることで選手の保留権を有すことができ、その間、選手は他球団との契約交渉や練習参加ができない)そのものをゼロベースから見直して話し合いたいと発信した。
2024年7月には、(保留制度によって)選手の移籍を制限するのは、独禁法に抵触するのではないかと公正取引委員会への申し立てを表明している。
球団側からすれば、選手獲得に費やした投資の回収とドラフト制度で担保された12球団の戦力均衡がゆらぐという観点からも同意できないものであり、公取委もまた消極的であった。
「本当に難しいところは分かっています。ただ高卒、大卒、社会人卒といろいろな選手に話を聞いたら、『やっぱり1年でも短くしてもらって早くFAを取りたい』という声が圧倒的なんです。現役選手として活躍できる期間が短い中でなるべく制限されることなくみんなにいい思いをしてもらいたい。
もちろんすぐに出て行かれたら、それまで応援していたファンの方を失望させてしまうこともわかります。FAも含めた移籍問題、保留制度の問題というのは、嶋(基宏)さん、炭谷(銀仁朗)さんの代から続いていて、ファンも理解していただくかたちでなるべく早く決着がついてくれたらと思うんです」
その他、會澤がNPBとの事務折衝で提起したのは、「投げ抹消」問題(先発投手が登板間隔が空く間に登録抹消されてFA権取得に必要な日数がカウントされず野手に比べて不公平との主張)の救済案や夏場のデーゲーム回避の呼びかけなど、多岐に渡る。
その精力的な活動ぶりから、かなり以前から選手会活動に関心があったのかと思われたが、それがまったく逆であった。