〈伝説の英語教師〉宮坂の恐怖政治
私たちが高校三年生になると、伝説の英語教師と呼ばれる男、そして今も伝説を作り続けている男の授業がカリキュラムに組み込まれるようになった。名は仮に宮坂とさせてもらう。
一発目の授業の時、私たちは「なんかまあ有名な奴らしい」程度の認識で、特に何も考えていなかったのだが、宮坂はものすごい勢いでバキーン、バキーン!と教室のドアを開けて閉め、一番前の席に座っていた生徒の机の上にあった英和辞典「ジーニアス」をいきなり引っつかみ、教室の端のゴミ箱にブン投げたのである。
「お前らァ!!」と宮坂は言った。
「日本の英語力はな、アジアでべべから二番なんや! べべがモンゴル! その次が日本や!! こんなもん使っとったら英語はいつまでたってもできるようにならん! 辞書は英英辞典のロングマンを使え!! 単語の語源をつねに意識しろ!!」